2010年12月23日木曜日

時生/東野圭吾

不治の病を患う息子に最後のときが訪れつつあるとき、宮本拓実は妻に、20年以上前に出会った少年との思い出を語り始める。どうしようもない若者だった拓実は、「トキオ」と名乗る少年と共に、謎を残して消えた恋人・千鶴の行方を追った。過去、現在、未来が工作するベストセラー作家の集大成作品。
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父親を傷害致死で殺し、刑務所に入った母親をなぜ許したのか?の問いへの竹美の答え。

「許すも許さへんもないわ。親子であることからは逃げられへんのやから。相手が申し訳ないと思ってくれてるのが分かったら、もうそれ以上は余計なこと考えんでもええのんと違う?」

「色々会ったけど、あんたのせいじゃねえよ。俺の人生だから、俺が落とし前をつけなきゃならねえ。もうあんたのせいにはしない。それが言いたかった。ええと、それからもう一つ。俺を産んでくれた事、感謝するよ。ありがとうな。」

「頑張っていき続けてください。きっと素晴らしい人生が待っているからって。」

主人公の拓実の喧嘩っ早い性格とかも含めて、バック・トゥ・ザ・フューチャっぽかったけど、面白かったな。

千鶴や時生、大阪の竹美や彼氏のジェシーも良いキャラしてます。
終わり方は、「秘密」並に綺麗なものでした。それしかないでしょ!っていう。

赤い指の次に読んだので、正反対な家族というものの物語を見た。


2010年12月18日土曜日

赤い指/東野圭吾

少女の遺体が住宅街で発見された。
捜査上に浮かんだ平凡な家族。
一体どんな悪夢が彼等を狂わせたのか。
「この家には、隠されている真実がある。
それはこの家の中で、彼等自身の手によって明かされなければならない」。
刑事・加賀恭一郎の謎めいた言葉の意味は?
家族のあり方を問う直木賞受賞後第一作。
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・家族の面倒事から逃げていた主人公
・いじめで心を閉ざしている息子
・息子に対して過保護で、亭主方の家族と馴染まない妻
・認知症の父を介護し続け、父親の死後認知症にかかった母
・母親の看病を続ける妹

読んだ人なら、こういう家族にはなりたくないと思うでしょうが、そう思うのは簡単で、実際どうすれば良いのか。
色々、考えさせられます。

2010年12月13日月曜日

キャズム/ジェフリー・ムーア

ハイテクをブレイクさせる「超」マーケティング理論
イノベータ、アーリー・アドプター、アーリー・マジョリティ、レイト・マジョリティ、ラガード

イノベータは新しい技術に関する製品を追い求める人たち。
アーリー・アドプターが購入しようとするのは、変革のための手段。
アーリー・マジョリティは、最新の発明と言われるものの多くが一過性の流行で終わることを十分認識しており、自分達が新製品を購入する前に、まず他者の動向をうかがおうとする。
レイト・マジョリティは、業界標準が確立されるのをひたすら待ち続け、手厚いサポートを受けるために、実績のある大企業から製品を購入したがる。
ラガードは、新しいハイテク製品には見向きもしない。

アーリー・アドプターとアーリー・マジョリティの狭間をキャズムと呼ぶ。

変革のための手段と生産性を改善する手段の違い。
アーリー・マジョリティへ市場を拡大する際には、「先行事例と手厚いサポートを必要とする顧客を、有効な先行事例と強力なサポートなしで攻略しようとしている」という事実を肝に銘じなければならない。

ビジョナリが求めているのはブレークスルー、実利主義者が求めているのは改善。

ビジョナリはプロジェクト指向であり、普遍性のある製品を作りたいベンダーにとっては不都合。
ビジョナリと一緒に仕事をして、双方が満足できる結果に持っていくことはほとんど不可能に近く、ビジョナリの期待を管理することに全精力を注ぐ。

まずニッチ市場から責めるというアプローチを取らないでキャズムを超えようとするのは、焚き付けを使わないで火をつけるようなものだ。
売り上げが期待できないような分野に手間隙を書けるつもりはない、と言うのではだめ。

キャズムの時期に、販売重視の戦略を立てるのは致命的である。
キャズムを超えようとするときには、顧客の数でターゲット・マーケットを決めるのではなく、顧客が感じている痛みの大きさで決める。
              支持派
               ↑
製品・ビジョナリ       |  企業・保守派
               |
スペシャリスト <=============================> ジェネラリスト
               |
テクノロジー・マニア     |  市場・実利主義者
               ↓

ニッチ市場を決定するとき、まず、その妥当性を裏付けてくれる競争相手を探す。

これは、「①」で問題を抱えている
「②」向けの、
「③」の製品であり、
「④」することができる。
そして、「⑤」とは違って、
この製品には、「⑥」が備わっている。


BtoBのマーケティングもなかなか面白いと思った。


2010年11月27日土曜日

螺鈿迷宮/海堂尊

医療界を震撼させたバチスタ・スキャンダルから一年半。東城大学の劣等医学生・天馬大吉は、ある日、幼馴染の記者、別宮葉子から奇妙な依頼を受けた。「碧翠院桜宮病院に潜入して欲しい」。この病院は、終末医療の先端施設として注目を集めていた。だが、経営者一族には黒い噂が耐えなかったのだ。やがて、看護ボランティアとして潜入した天馬の前で、患者が次々と不自然な死を遂げた!彼らは本当に病死か、それとも。
医学生・天馬大吉が潜入した不審死の続く桜宮病院に、奇妙な皮膚科の医者がやってきた。その名も白鳥。彼こそ、"氷姫"こと姫宮と共に病院の闇を暴くべく厚生労働省から送り込まれた"刺客"だった。だが、院長の桜宮巌雄とその双子の娘姉妹は、白鳥さえ予測のつかない罠をしかけていた。終末医療の先端施設に隠された光と影。果たして、天満と白鳥がそこで見たものとは?現役医師が描く、傑作医療ミステリー!
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医者が空想の一つとして描いたモデルが、すみれ・エンタープライズ、警察との癒着と終末医療の関係にあるかもしれない。

著者の作品では、凄い人が沢山出てきますが、桜宮巌雄もその一人ですね。

「死を学べ。死体の声に耳をすませ。ひとりひとりの患者の死にきちんと向き合い続けてさえいれば、いつか立派な医者になれる」

終わり方は・・・、2重に意外でした。
続編がありそうですが、どうするんでしょうね~~。

1重の意外だけで良かったと思ったりするんですけど・・・。


2010年10月22日金曜日

EXIT 売却/奈部真・勝間和代

実際に筆を取らずに、監修したのが面白さを生んだように思う。

小説とはいえ、ファンドの世界を疑似体験させていただきました。
凄い世界ですね。仕事にのめり込むのも分かる気がします。

自分の立ち位置として、どうなりたいか、考えさせられた小説でした。

ある日いなくなっても誰も困らないような仕事をしていた。

2010年10月17日日曜日

ウインクで乾杯/東野圭吾

パーティ・コンパニオン小田香子は、恐怖のあまり声も出なかった。仕事先のホテルの客室で、同僚牧村絵里が、毒入りビールを飲んで死んでいた!現場は完全な密室。警察は自殺だと言うが。やがて絵里の親友由香利が自室で扼殺され、香子にまで間の手が迫ってきた。誰が、なぜ、何のために・・・。ミステリー界の雄が放つ長編本格推理の傑作!
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軽く読める本格推理小説という感じでしょうか。2時間ドラマのようなイメージ。


パラレルワールド・ラブストーリー/東野圭吾

親友の恋人を手に入れるために、俺は一体何をしたのだろうか。「本当の過去」を取り戻すため、「記憶」と「真実」のはざまを辿る敦賀崇史。錯綜する世界の向こうに潜む闇、一つの疑問が、更なる謎を生む。精緻な伏線、意表をつく展開、ついに解き明かされる驚愕の事実とは!?傑作長編ミステリー
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記憶が改変される前後の話が、交互に展開され、最初から「どうなってるんだ?」と読者に抱かせる。
最先端のリアリティを研究している人達ならではの、友情、愛情、嫉妬の話。

女性は強いな。

大前流心理経済学/大前研一

・日本は打ち手の全てを持っている
・従来の経済学が通用しない日本経済
・日本人の不思議な経済心理
・新たな繁栄のための心理経済学
・心理を動かし、人を動かす
・資産運用を国技にせよ
・心理経済と集団IQ
・一人の人間が世界を変える
・日本人の新しいライフプラン
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たまりに溜まった、日本人の個人貯蓄1500兆円を、「使おう」と思うようなものやサービス、社会の仕組みが必要。
ヤフーBB、電機産業、航空券の値下げなど、過去にも移り始めると一気に動くのも日本人の心理の特徴。
打ち手の全てを持っている日本が、集団IQを一気に高められるか。

渋滞中の抜け道を見つけて喜ぶ心理、というのは日本人の特徴として良く分かる。
困難な状況を受け入れて、なんとか対策を見つけ出す、というのは、本質を解決しようとする努力を怠っている。とも考えられるなぁ。

海外と資産運用に関しては、相変わらずいつも必要だと感じさせられる。

金利を上げる
ボーダレス社会では、金利を下げると経済が活性化するという従来の理念は通用しない。金利を上げ、消費者の紐を緩める必要がある。いつまでも、利息を銀行ばかりに取られるな。

相続、贈与等に関する税制を見直し、資産の若年層への移動
将来が不安で無目的に貯蓄をする若者と、お金の使い道がない年寄り。
平均2500万円の資産を遺していく。この資金を若者へと循環させる。

住宅の建て替えを奨励。

アクティブ・シニアのコミュニティを作る。
ロスの南のラグナ・二ゲルという街のリタイアメントタウン。
港湾都市、ハブ空港、横浜を日本のベニスへ、都債、世界へ競争力のある街づくり。

いくらあれば生活できるのか、ライフプランを提示する。

ベンチャー企業のエンジェルとなる。
資産運用を国技にする。

引退して、もう仕事もしていない人に、イザという時の保険はいらないのではないか?


2010年10月16日土曜日

変身/東野圭吾

平凡な青年・成瀬純一をある日突然、不慮の事故が襲った。そして彼の頭に世界初の脳移植手術が行われた。それまで画家を夢見て、優しい恋人を愛していた純一は、手術後徐々に性格が変わっていくのを、自分ではどうしようもない。自己崩壊の恐怖に駆られた純一は自分に移植されたドナーの正体を突き止める。
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物語として割り切りきれず、なかなか入り込めなかったが、下の台詞は印象に残った。

「生きているというのは、単に呼吸しているとか、心臓が動いているとかってことじゃない。脳波が出ているって事でもない。それは足跡を残すって事なんだ。後ろに足跡を見て、確かに自分がつけたものだとわかるのが、生きているということなんだ。後ろにある足跡を見て、確かに自分がつけたものだと分かるのが、生きているということなんだ。だけど今の俺は、かつて自分が残してきたはずの足跡を見ても、それが自分のものだとはどうしても思えない。20年以上生きてきたはずの成瀬純一は、もうどこにもいないんだ」

読んでいて、「これは!」って思える文章が出てくる。


2010年10月11日月曜日

ジェネラル・ルージュの凱旋/海堂尊

チーム・バチスタの栄光、ナイチンゲールの沈黙、でおなじみ海堂尊が贈る、大人気<田口・白鳥シリーズ>三度登場。伝説の歌姫が東城大学医学部付属病院に緊急入院した頃、不定愁訴外来担当の田口公平の元には、匿名の告発文書が届いていた。
”将軍(ジェネラル)"の異名をとる、救命救急センター部長の速水晃一が特定業者と癒着していると言う。高階病院長から依頼を受けた田口は調査に乗り出す。
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ナイチンゲールの沈黙、と平行して起こっていた事件の話。

救命救急センター部長の速水や、医師の佐藤、看護士の花房、如月、エシックス・コミティの沼田。
皆、キャラが立っていて、周りの誰かに置き換えられそうだ。

特に、委員会でその色が際立つ。

速水の最優先事項を的確にズバッと射抜く言葉と、ネチッコ~イ沼田。
ロジカル・モンスター白鳥の論理的で嫌味のある話し方。
ここぞと言うときに、かっこいい田口。

議論しているシーンは、非常に面白かった。

一番印象に残っているのは、速水が佐藤副部長に対して行った口頭試問。

この回答にも、現役医師である著者ならではの、読者に伝えたいものがあったように思う。


フィッシュストーリー/伊坂幸太郎

最後のレコーディングに望んだ売れないロックバンド。
「いい曲なんだよ。届けよ、確かに」テープに記録された言葉は、未来に届いて世界を救う。
時空をまたいでリンクした出来事が、胸のすくエンディングへと一閃に向かう瞠目の話題作他、伊坂ワールドの人気者・黒澤が大活躍の「サクリファイス」「ポテチ」など、変幻自在の筆致で繰り出される中篇4連打。
爽快感あふれる作品集
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フィッシュ・ストーリーとポテチがよかったなぁ。

この人は、音楽が好きだなぁ。
変に玄人ぶらなくて、素人として。

ポテチは、登場人物が明るくて良いな。
黒澤もやっぱり良い味出してます。


2010年10月7日木曜日

宿命/東野圭吾

高校時代の初恋の女性と心ならずも別れなければならなかった男は、苦闘の青春を過ごした後、警察官となった。男の前に10年ぶりに現れたのは学生時代のライバルだった男で、奇しくも初恋の女の夫となっていた。刑事と容疑者、幼なじみの2人が宿命の対決を果すとき、余りにも皮肉で感動的な結末が用意される。
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2010年9月18日土曜日

「片想い/東野圭吾」

十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻と共に、彼女を匿うが・・・。十年という歳月は、かつての仲間達を、そして自分を、変えてしまったのだろうか?過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間達を描いた、傑作長編ミステリー。
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「血液型性格診断を信じている人は多い。その人達によれば、人間はA, B, O, ABの4種類に分類できると言うことなのだろう。しかしそういう人たちでも、日常生活で血液型によって、相手を差別すると言うことはほとんど無い。血液型が違っても、人間であることに変わりにないと思っている。また同時に、本当に分類するには4種類などという大ざっぱな分け方が不可能なことも知っている。
では、何故多くの人は、染色体のタイプには縛られるのだろう。XXであろうとXYであろうと、あるいはそれ以外のものであろうと、人間には変わりがないという考え方が何故できないのだろう。」

これを色々な角度から描いたミステリー。
この文章のインパクトは強かった。

2010年9月12日日曜日

ファーストクラスに乗る人のシンプルな習慣/美月あきこ

私は日本と外資系航空会社に合計16年間、キャビンアテンダントとして勤務し、多くのVIPのサービスを担当させていただきました。
その体験を通して、ファーストクラスのお客様たちには、いくつかのシンプルな共通点があることに気づきました。それらは、すぐに真似できるものばかりですが、実行している人は少ないようです。
私自身、ファーストクラスで学んだことをコツコツと実践していった結果、起業することができました。
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ビジネス=エコノミーの5倍
ファースト=ビジネスの3~4倍

メモをどんどん取る。メモを取る姿で感動させる。
朝の時間を有効利用する。
朝は頭を使う仕事。午後はルーティン・ワーク。

座る位置は、相手の斜めの位置が望ましい。
話をさえぎらないで最初から終わりまで聞く。
相手に正対し、時々相手の目を見る。
相手が言うことを予測して、結論を先回りして言わない。
声のトーンやその変化、表情、ジェスチャーなど言葉にならない情報を読む。
何があっても相手の言うことを否定しない。
相手が話している最中に、次に自分が何を言おうかと考えない。
適度に頷く。
顔全体で微笑む。
肯定的な相槌を打つ。
少し前かがみになる。
腕組みをしたり、脚を組んだりしない。
話している相手に対して「指差し」のしぐさをしない。
腕時計や携帯電話を見ない。
髪に触れ続けない。

著者の起業への考え方と着想も面白かった。


2010年9月11日土曜日

会社を踏み台にする生き方/吉越浩一郎

力がなければ、生きられない時代が来た。今居る会社で経験している理不尽な出来事は、必ず君を強くする。どんなに不況でも、企業は絶対に力のある人材が欲しいのだ。頑張れ。そして、圧倒的な仕事力をつけ、自分の思うままの道を歩くのだ。
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基本的に、その他の著書にも出てくる話がたくさん出てきている。

・徹底的にパクれ。
・目の前の遅れを取り戻すために汗をかくのではなく、長く利用できるシステム作りのためにこそ汗をかくべきだ。
・むやみに頑張るのではなく、実用的な方向での努力。
・時間を決めて、効率をあげる(デッドライン仕事術)

しかし、第二章の今居る会社で圧倒的な力をつける仕事術で書かれているのは新しい発見だった。

まず会社や組織の「ワク」にはまれ。そこでの理不尽な経験が君を育てる。
意外な言葉だったが、一度理不尽な現場で仕事を経験しているので、それが役に立っていると言うことなのだろう。

海外に出るなり、丸裸の自分の状態を知り、ビジネス社会、世界の競争の中に一度は自分を置いてみたい。
そういう気持ちにまたさせてもらった。

2010年8月28日土曜日

はじめてのiPhoneプログラミング

iPhoneアプリ開発は、この一冊で十分です。
アプリ開発の基礎からワンステップ上の応用知識まで、サンプルコードを交えながら詳細に解説。
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GUI開発をしたことがないけど、ある程度のプログラミングをやったことがある人には最適でしょう。

Microsoft Visual Studioなどで、MAC以外のGUI開発をやったことがある人も、一度は目を通した方が良いくらいのレベル。
ちなみに私はこれ。

XcodeでCocoaプログラミングをやったことがある人にとっては、必要ないかもしれません。

基本的なユーザインタフェースの実装方法と、iPhoneのGPS機能、モーションセンサ機能、各国の言語に対応するLocale機能、カメラ機能の使い方など、一通り理解することができます。

これ一冊やれば、あとは自分の思う通りのアプリを開発できると思います。
もちろん、独自に色々調べていかないと行けませんけどね。

サンプルコードを全て書いて実装していきましたけど、サンプルコードが結構間違っているので、著者のウェブサイトに登録して、最新サンプルプログラムをダウンロードした方が良いでしょう。


2010年8月22日日曜日

分身/東野圭吾

函館市生まれの氏家鞠子は、18歳。札幌の大学に通っている。
最近、自分にそっくりな女性がテレビに出演していたと聞いた。小林双葉は、東京の女子大生で20歳。
アマチュアバンドの歌手だが、なぜか母親からテレビ出演を禁止される。
鞠子と双葉、この二人を結ぶものは何か?現代医学の危険な領域を描くサスペンス長篇。
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そっくりな女性、それぞれが自分の過去について調べ、徐々に明らかになっていく過程はそれほど意外性もなく、淡々と進んでいった。
「現代医学の危険な領域」といわれている部分の、当事者や研究者達の考えには、色々と考えさせられるものがあった。

「あなたが自分の未来にそろそろ限界を感じ始めた頃、今のあなたと全く同じ姿、同じ遺伝子を持った男が突然あらわれてごらんなさい。あなたはきっと、その若い男を激しく憎むわ。嫉妬すると言ってもいいかもしれない。」

2010年8月11日水曜日

30万円台でぐるり夢の世界一周/角田直樹

世界一周堂という世界一周航空券専門の旅行会社を営む著者。

この世界一周航空券について、存在は知っていて、いつか使いたい or 使わなければならない?時が来ると思っていたので、下調べをしておこうと、本書を買いました。

世界一周航空券とは、
・出発地から出発地まで戻るまでの、片道航空券の束。
・太平洋と大西洋を一回ずつだけ渡ることができる。
・アライアンスごとに、利用できる経由地が異なる。

世界を半周して、往復航空券で帰ってきて、しばらくした後、またさらに世界半周が有効なこととか、知らなかった。

世界一周航空券を購入し、旅程を立てるときには、5W1Hに加え、次の3つのHが必要だと言う。

How Long: どのくらいの期間か?
How Much:いくらぐらいの予算か?
Have:何を持っていくか?

また、様々な利用例を紹介しているので、色々と参考になります。


2010年8月8日日曜日

天空の蜂/東野圭吾

奪取された超大型特殊ヘリコプターには、爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民全てを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非常の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき・・・。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。
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東野圭吾、やはり面白い。

社会的メッセージを、高度な技術的要素を絡めて話を展開するあたり・・・個人的には凄く好きな作品でした。

フライ・バイ・ワイヤー技術を初めて搭載した、超大型特殊ヘリコプターのお披露目当日の朝、何ものかに遠隔操作され、原子力発電所の真上で停滞。
そして、犯人から、「全国の原子力発電所を止めよ、さもなければヘリを墜落させる」との脅迫状が届く。
わずか10時間足らずの間に、犯人捜しに奔走する警察や、ヘリに乗ってしまっていた子供を助けるシーンなど、手に汗握る展開だった。
そして、新型ヘリコプターや、原子力発電に関する技術的な記述はさすが。
個人的には、こういう現実的な技術が関連してくる小説を書き続けていって欲しいと思う。

「世の中には無くちゃ困るが、まともに目の前にあると嫌われるものがある。」

メインテーマは、原子力発電所。原子力発電所で働く人(清掃者、運営者)、発電所を作る技術者、反原発派の人々、そして無関心なその他大勢、と様々な視点からの原子力発電所が描かれている。

そして、一番大きな問題として浮かび上がってくるのが、犯人の動機に繋がってくる。

「沈黙する群衆の、あの不気味な仮面に向かって、石の一つでも投げつけることができないだろうか?」

2010年7月17日土曜日

木のいのち木のこころ/天 西岡常一、地 小川三夫、人 塩野米松

法隆寺を1300年守ってきたのは、職人の手から手へと引き継がれてきた技と知恵。それは決して言葉にできない手の記憶である。"最後の宮大工"西岡常一が木と人の育て方を語る<天>の巻。三度追い返されながらも遂に西岡の唯一の内弟子となり、夢を実現させた小川三夫が、宮大工の未来を語る<地>の巻。さらに小川が主催するいかるが公社の若者19人へのインタビュー<人>の巻。
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法隆寺や薬師寺に参拝に来て、そこにどれだけの人が参加してこれを造ったのか、全て人の手で造られたんやということを、ちょっとでも考えてみてくれると良いですな。
姿勢が悪くても、力の入れ具合が悪くても、癖があっても、刃は研げません。
そのたびに「何でや」と思いますやろ。それで考えるんですな。そして先輩のすることをよく見ますな。
素直に、自分の癖を取って、自分で考え、工夫して、努力して初めて身につくんです。
苦労して考え考えやっているうちに、ふっと抜けるんですな。そしてこうやるんかと気が付くんです。こうして覚えたことは消して忘れません。

丸暗記したほうが早く、世話はないんですが、なぜと考える人を育てるほうが大工としては良い。

「神仏をあがめずして社頭伽藍を口にすべからず」
「家宅は住む人の心を離れて家宅なし」
「伽藍の造営には四神相応の地を選べ」
「堂塔建立の用材は木を買わず、山を買え」
「木は生育の方位のままに使え」
「堂塔の木組みは寸法で組まず木の癖で組め」
「木の癖組みは工人たちのこころ組み」


2010年7月15日木曜日

チェンジメーカー/勝間和代

「チェンジメーカー(Change Maker)」という言葉を聞いたことがありますか?
日本をより良い方向に変えるため、世界をより良い方向に帰るためには、「チェンジメーカー」と言われる変革者の存在が必要ですが、私たち一人一人、誰もが「チェンジメーカー」になり得る素質を持っています。大切なのは、世の中を良くしたいという「強い思い」を粘り強く持ち続けることです。
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重要なことは、住みたい社会、暮らしたい未来をビビッドに思い描き、それが今とどのように違っていて、何がギャップで、障害は何であるかを理解することです。

あまりにも長い時間を会社に使いすぎて、会社以外に居場所がないから、日本にシルバー資本主義が蔓延している。

簡単だけれども影響力の高い行動を「ボウリングの一番ピン」と私は呼んでいます。

セーフティ・ネット作りとは、簡単に言うと自分の居場所を沢山作ることです。

目標はSMARTに!
S: Simple, 余計なものを省き、簡単にすること
M: Measurable, 測定できるような数字にすること
A: Achievable, 容易ではないが、頑張れば達成できるものにすること
R: Result-based, 結果を成果として現せるものにすること
T: Time-oriented, 期限を明確にすること

結婚生活のすすめ
1.ワーク・ライフ・バランスを考えざるを得ないことから、生産性が向上する。
2.パートナーと共に暮らすことにより、他人との学びあいの機会を得る。
3.ダイバーシティ(社会の多様性)に対する理解が深まる。

子供も部下も自ら成長する力を持っているので、自分の型にはめようとしてはいけないのです。

「手伝ってあげようか」と言う台詞の背景には、「妻がやるのが本来だが、少しは自分が手伝おう」という価値観が見え隠れします。

日本人は、今までと同じように、あるいは周りと同じように仕事をします。目的を実現するために効率的な方法を考える「目的思考」ではなく、「同調思考」で仕事をしているため、そこから抜け出す人に不寛容なのです。

会社選びの判断軸。
1.コモディティ企業ではなく、スペシャリティ企業を選ぼう
2.スペシャリティ企業であり続ける会社を選ぼう
3.成長ステージにある会社を選ぼう
4.利益部門への配属を望もう
5.自分の強みを積み上げられる転職先を選ぼう

「非正規雇用を認める職種を増やしたのは、高年齢層の正規雇用を守るため」

ポータブルスキル
1.他業界の事例を勉強し、自分の業界でも利用できるアイディアを深める。
2.自分の仕事のマニュアルを作り、体系化・普遍化する
3.取引先の社員を自分のメンバーだと仮定して仕事をする

自分が会社に必要な人間になるために、自分にしかできない仕事を作ろうとする人がいますが、提案2はその反対です。

各事業の担当者は、自分がインターネットを使って、既存のGEのビジネスを攻撃する側だったら、何をするか、徹底的に考え抜きました。

経営者の視点から考えるために、以下の心技体の枠組みを理解してください。
心ー長期的なビジョンと目標を持つこと、日常業務を超えた視点で仕事を見ること
技ーマーケティングを実行して顧客を開拓し、財務で価値を図ること
体ー自分がやるのではなく、まわりにやりきらせる実行力を持つこと


2010年6月20日日曜日

Evernote/コグレマサト

パソコン、iPhone、Androidで使える神を超えたデジタル・ノート活用術

Evernote使い始めて、1年くらいになりますが、ほとんどノートしか使っていないのが現状ですが、十分役に立っています。

そんな自分にとっては、特に目から鱗な内容はありませんでした。
やはり、こういうソフトは、使い込んで試行錯誤しながら、自分の使い方を見つけていくものですね。

知らない人は、とりあえず使ってみるべし。


人生と仕事の段取り術/小室淑恵

不況による会社のコストカット、夫婦共働きや介護問題という環境の変化。これからは、今までのように思う存分時間をかけて仕事をするという働き方ができなくなる。限られた時間でいかに効率的に成果を挙げるかということが求められる。そのために身につけなければならないのが段取り力だ。
本書は毎日の仕事の効率を上げて、残業を減らすためのノウハウから、豊かな人生を送るための工夫まで、様々な「段取り」テクニックを紹介する。
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夫への愛情曲線は、出産を境に回復組みと低迷組みに二極化することが分かりました。この二極化の理由を探ったところ、「子供が乳児期に、夫が一緒にやってくれたか否か」という設問の回答ときわめて高い相関があったそうです。

「自分の仕事の途中経過もクリアにして、見せてくれる社員」

相手に積極的に乗ってきてもらいたいときは、先に相手にそのことに詳しくなっておいてもらうことが重要なのです。

「時間があるときに小室に聞きたいことリスト」

スケジュール長には、月ごとの労働生産性を書き込む欄を作って、月末に一ヶ月の自分の給与を働いた時間で割って、その月は時間当たりいくらで働いたかを計算して書き込むのです。

メモは直接書き込まず、付箋に書き込むことにし、書類を共有する。

自分の仕事のマニュアルを作る。
・頻度の低い仕事
・頻度の高い仕事

自分がこれから接点を持ちたい会社が大勢いる講演会で、自己紹介をして、質問をする。

ビジネスで大切なのは、言葉が簡潔で短いことでなく、「短い時間で納得してもらうこと」です。

朝メールで、仕事の段取りとすりあわせをする。

プリント、スーパーの宅配など、ウェブを活用し、結婚生活も段取り良く。

一年の始まりに、ホリデイリストを作り、休みたい日、生きたいところをリストアップして、プライベートも段取り良く。


2010年5月31日月曜日

会社を辞めずに簡単にできる週末起業/藤井孝一

「もの・ワザ・知識・人脈」を売ることで、実際に会社を辞めずにビジネスを始め、成功している。

一番お金をつぎ込んだものはなに?
徹夜してでもできることはなに?
お金を払ってでもやりたいことはなに?
二時間ぶっ通しで話し続けられるものはなに?
今まで人にしてあげて感謝されたことはなに?

大好きなことや、自分の中にある「必然性」をテーマに起業することの大切さ・・・英語教材販売
自分の持っている情報や知識、ノウハウを商品にする・・・メールマガジン発行
自ら現場しごとっを手がけずに仲介業に徹する・・・翻訳仲介業
ニッチ市場への参入により「B2B」で成功・・・ウェブディレクター
現場で直面した問題をクリアする過程で、ワザ→人脈→知識と発展させた・・・婚礼司会派遣業

究極の成功ノウハウ・・・「とにかく始めてみること」


宋文州が語るここが変だよ日本の会社/宋文州

・根性を使うよりも頭を使おう。
何度も足を運び、辛抱強く訪問するよりも、興味を持ってくれるお客さんに沢山会おう。
・国民性に逃げ道を作るのはやめよう。
・社員のモチベーションを上げるな。
社員にはそれぞれモチベーションがあると思っているんです。実は、ただその動機が、それぞれ違うだけなんです。

たまたまその時にしか通用しないようなやり方を、あたかも万年世界中でも通用するような方法論だと思い込んでしまう。
モチベーションは、人様の内面的なもの、精神的な自由、価値観の多用性、そんなものに関わるから、あまり踏み込まない方が良い。
社員と言うのは、会社の資産じゃない。会社はあくまでもステージです。

人がやめない会社はやばい
終わり良ければ全て由と言うことわざの愚かさ


2010年5月27日木曜日

ビジネスウエポン/大前研一

世界最強のコンサルティング会社「マッキンゼー&カンパニー」でNo.1コンサルタントとして活躍した大前研一教授の最大の武器(ウエポン)は、強力な論理力と創造力である。
21世紀のサラリーマンが、ビジネスの荒波を乗り切って行くには、今すぐこのビジネス・ウエポンを身につけることが必要だ。
この一冊でビジネスの力をつけてほしい。
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英語、IT、金融、この3つが今後、日本で生き残っていくために必要な武器(ビジネス・ウエポン)となると、この本でも述べられていました。
最近、大前研一さんだけでなく、たくさんの人が同じ3つの項目を挙げている。

そして、この本では具体的な例が挙げられていたのが非常に印象的。
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1.不要なアメリカ子会社のアメリカ企業への売却を交渉する担当者に突然指名された。英語で一人でやり抜く自信があるか?
2.ドイツの3大化学企業の内、まだ日本メーカーの手の付いていないところを見つけ、入らなくなった九州工場を買ってもらいたい。インターネットだけでその相手を見つけ、交渉のテーブルに付かせることができるか?
3.上記のケースに関して適正な売却価格を算出せよ。そして交渉でどのような算出根拠を、どの順序で出すのか述べよ。

こうしたことが簡単にできなければ、ゼネラリストの管理職とは言えない。40歳になってこれができなければ、今までサボっていたとしか言いようがない。
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なるほど、イメージが少し掴めた。

それにしても、自分にしては、「金融」に関してはかなりハードルが高いと感じざるを得ないな。


2010年4月18日日曜日

メンタル・コーチング/織田淳太郎

矢野が右翼の守備に着いた直後だった。渡辺が投じた初球を本多がフルスイングした。快音を発した打球が、右翼へと大きく舞った。矢野が背走した。実況アナウンサーが、「これは文句なし!」と声を張り上げた。

フォアTheチームという言葉がありますが、これをみんなで協力しなければならないからと言う善悪の邪念で考えてしまうと、邪念みたいなものが生まれる事があります。
一方、もうやるっきゃ無いという心境に追い込まれることがある。打算や駆け引きなく、みんながそういう気持ちになった時、非常に面白いことが起こるんです。チーム全体が一つの生き物となって、大きな波に乗り、一つの方向へと突き進む訳ですね。もちろんこれは人生にも言えることです。

キャリアは計画通りにいかないもの。
職業目標を持たなければやる気がわかないというのは、未来の配偶者がわからないとデートができないと言っているようなものです。

怒っている子には、表層意識、中層意識、深層意識の三つがある。
サボるというやってはいけないことをやっているから怒る。
注意しないと自分が怒られる。
自分もやりたく無い。

いくらプラス思考とはいえ、不安感情があるにもかかわらず、それを自分のものでは無いと切り捨ててしまう暗示をかけてしまうと、そのエネルギーが内側にたまって行くばかり。どこかで昇華させてあげないと、それが現実に投影されてしまう。

情感を表現したり、手放したりすることが、生命力アップにつながる。

イノベーションのジレンマ 日本「半導体」敗戦/湯之上隆

エルピーダメモリ1社を残してDRAMから撤退した日本半導体産業。
1980年代半ばに、世界を制した技術と品質は、いまや不況のたびに膨大な赤字を生み出す元凶と化した。
一体、なぜ、こんなことになってしまったのか?
半導体産業の技術者として出発した社会科学者が、今、その全てを解明する。
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非常に興味深かった。

過剰技術・過剰品質の病気。
半導体生産に関する3つの階層。
要素技術:プロセス技術(微細加工技術など)
インテグレーション技術:工程フロー構築技術
生産技術:製造・作りこみ技術(歩留まり)

日本の技術力は、他国に負けないと言うが、高性能、高品質に偏りがち。
要素技術は、技術開発力は高いが、オーバースペック気味。
インテグレーション技術は、高性能実現のため、工程数が多い。
生産技術は、歩留まりよりも高品質優先。

安く作る技術というのは、圧倒的に負けているが、日本の技術者は、「安く作る技術」という観点が無いようだ。

韓国に負けた日本半導体メーカーの言い訳。
「経営、戦略、コスト競争力で負けた」「技術では負けていなかった」という2点に集約。
このコスト競争力というのを、技術ではなく、規模の経済やそれを実現するための投資に影響すると考えている。

スパコン用に長期寿命保障のDRAMを作り、世界を凌駕した日本の半導体メーカ。

しかし、微細化が進むにつれて、パソコンというものが、一国に一台が、一社に一台になり、一家に一台になり、一人に一台になった。
そこで、どうなるかというと、高品質のDRAMなぞ、もはや必要ないということだ。

それに気づいた韓国や台湾、米国メーカは、低コストで要求に合う品質のDRAMを作る「技術」で対抗し、日本を抜き去っていった。

しかし、高品質・高性能が「技術」だと思い込んでいる日本のメーカーには、「技術では負けないのに、コスト競争力、戦略で負けた」という認識が出来上がる。

悪いところが分かっていないのを、直すというのは極めて難しい。


韓国サムスンの研究開発→量産開発のパイプライン組織構造は非常に面白い。
あとは、マーケティングが非常に多い。これは、単に市場調査を行うのではない。例えば、中国担当のまーけったならば、まず中国に1~2年住み、中国語を話せるようになり、中国人と同じものを食べ、中国人が一体どのような嗜好を持つのかを学ぶ。
日本では、各社に数人くらいのマーケッタで、窓際族扱いである。

エルピーダの坂本社長は業界以外でも有名かもしれないが、本書で実際の社員の声が圧倒的に変わっていく様を知って、見事な回復振りに驚いた。

半導体産業自体はなくならない。
ネジ・クギと同然になっていくだろうから、これからコスト競争力がいっそう高まるのは目に見えている。

2010年4月17日土曜日

サッカーとイタリア人/小川光夫

毎週どこかで日韓戦が行われている国。イタリアとはそんな国なのである。

サウロ・トマ、スペルガの悲劇後、復帰第一戦。
スタジアムまで続く道の菱和w期の建物のバルコニー全てが、トリノのカラー、グラナータ一色に染められていたんだ。そして、その全てに人々があふれかえり、我々にあらん限りの声援を送っていたんだよ。

ウディネーゼの「ジーコか、オーストリアか!」

カルチョの首都、ミラノ:インテル、ミラン
カルチョのパイオニア、ジェノヴァ:ジェノア、サンプドリア
スペルガの悲劇、トリノ:ユヴェントス、トリノ
ロバが飛んだ日、ヴェローナ:ヘラス、キエーヴェ
ジーコかオーストリアか、ウディネーゼ:ウディネーゼ
トスカーナの覇権、トスカーナ:シエナ、リヴォルノ、エンポリ、フィオレンティーナ
シンデレラ・ストーリーの終焉:パルマ、ボローニャ
"東洋の神秘"との幸せな出会い:ペルージャ
"神"とのラブストーリ:ナポリ
古の旅人は、「ナポリを見てから死ね」と言い、このヴェズーヴィオ火山の裾野に広がる港町の美しさを称えた。イタリア全土でも、ローマ、ミラノに続く3番目の規模を誇る。
祖母がナポリ出身のマラドーナ。相思相愛の移籍後、約8万人収容のスタディオ・サン・パオロの86%が年間シーとして予約済み。
「初優勝の後、スパッカ・ナポリをはじめ町全体がまさに無法地帯と化した。」ナポリの市営墓地の壁に、そこに眠る使者たちに向けて、「お前たちは、本当に大事な瞬間を見逃した!」と。
そして、90年W杯イタリア大会、アルゼンチン代表キャプテンとしてマラドーナは、地元イタリアを破る大金星。奇しくもそのときの会場は、ナポリ。
地元での優勝を確実視していたイタリア人は、このマラドーナの"ミラコーロ"を赦さなかった。
それ以降、バッシングが始まり、イタリアから追放される。
しかし、ナポリの人々は、マラドーナへの愛情が消えうせることはなかった。
麻薬中毒で昏睡状態と知ると、スタジアムに「ディエゴ、君の復活を信じている。」「俺たちは、いつも君と一緒だ」とエールを送った。
南部の灯を消すな:バーリ、レッジーナ、レッチェ、カタンザーロ
2つの島のカルチョ、シチリア、サルデーニャ:カターニア、パレルモ、メッシーナ、カリアり
最も過激なデルビー、ローマ:ASローマ、ラツィオ

2010年4月11日日曜日

秘密/東野圭吾

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な"秘密"の生活が始まった。
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1人の女性が子供に戻って、人生をやり直す。
ただ、娘の体で、夫をお父さんとして・・・。

小学生の頃は、つい、大人として振舞ってしまう失敗をしたり、直子が後悔をやり直すために、勉学に励む姿など、微笑ましくプラスの部分も多くあった。

小学校の先生の写真を見つけたとき、直子は何も言わなかった。
再婚話が出た時は、「俺にはお前がいるから」と言った。

だが、高校生になる頃から一変する。

直子の父親の蕎麦を食べたとき。

娘が男の子と電話をしたり、デートの約束をしたりするのに干渉するお父さん。
この場合は彼にとっては妻であり、娘であり、、、複雑。

俺よりあいつといる方が楽しいのか?

「お前は普通にする権利なんかない」

自分で言葉を発しながら、気持ちのいいものではないだろうなぁ。

"あぁ、言っちゃったよ~~、でも気持ちは分かるなぁ"、っていう感じでした。


物語の終わり方としてはしつこくなく、スッキリしていて好きだなぁ、、、タッチのようなラストシーン。
広末さんも解説で言ってますが、カップルで感想を述べ合ったとすると、色んな議論が巻き起こりそうです。

やり直しの人生をどう生きるか、、、
再婚話が出たときに、どうするか、、、
綺麗な女性の写真を夫の本の間から見つけたときに、妻はどうするか、、、
娘(妻)が高校生の時の、夫の束縛をどう思うか、、、
夫の「藻奈美」として扱う決断をどう思うか、、、
その後の直子の決断をどう思うか、、、
直子の決断を推定したときに、どうするか、、、

事件の被害者に対する考えは、藤崎さんのルームミラーの2つの人形が、全てを語っていると思う

2010年3月28日日曜日

勝間さん、努力で幸せになれますか?/勝間和代 香山リカ

いまの自分じゃない自分になりたいけど、いまの自分じゃない自分というのが、どんな自分かがわからない。

MBAスクールにいくのは簡単。ただ、その2年間を過ごして、その後の行き先が見つけられなかったときに、その人はまたMBAスクール2みたいなものを見つけなければいけなくなってしまうわけですよね。だから同じ頑張るのであっても、ただ、MBAスクールに入って頑張っているから楽しいというのではなくて、自分の判断と意思でどういう出口があるか、どういうところを目指しているかという行き先を見ながら頑張る必要があると思うんです。

結局、何が一番の問題かというと、時間が有限であるという概念が、日本企業や日本人の一人一人に非常に希薄なことなんです。エネルギーよりも何よりも、時間が一番の希少資源です。

2010年2月28日日曜日

枕女優/新堂冬樹

「少し瞼が重いな。鼻ももう少し高い方がいい。歯並びも気になる。谷川、一ヶ月で、全部直させろ。売り込みはそれからだ」。
高校三年生の夏、一人の少女がある弱小芸能事務所のオーディションに合格し、芸能界への切符を手にした。芸能人・鳥居水香の誕生…しかし憧れの世界に入った彼女の前には、想像を絶する現実が立ちふさがっていた。
月収数千円の生活に耐える日々、バーター女優と蔑まれる屈辱、そして自らの身体を駆使して役を獲得する“枕営業”。親を、友を、故郷を捨て、そして「整形」により十七年間ともに歩んで来た「鈴木弘子」という“個”までも無くしてなお、少女はトップ女優になることを決意する。
プロデューサー、脚本家、企業の重役との「夜の営業」、ライバルのスキャンダルを画策、プロデューサーへの恐喝。そして数年後。四クール連続のドラマ出演、六本のCM、「なりたい芸能人の顔NO.1」…バーター女優・枕女優はいつしか、わがまま姫・独裁女王・女帝と呼ばれるようになり、芸能界のトップに君臨していた。しかし…。芸能プロダクション社長でもある著者が「芸能界」を舞台に初めて描いた、衝撃の問題作、ついに刊行。
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章毎に挿入されるショートストーリや、最初に回想シーンから入るところなど、構成に工夫がされていて、珍しいなと思った。


「弘子。別人みたいな顔になって売れて、それで幸せなの?」
「そう。あなたがいいなら、何も言わないわ。でも、母さんの知っている弘子は、もういなくなったわ。」

黒新堂冬樹のブラック営業術/新堂冬樹

「うまくいかない」「もうだめだ」と落ち込んでいる人間に同情はしない。
悩んでいる暇があったら、人を驚かせることを考えろ!

新堂冬樹がビジネス本を出した。
すぐに、積読本をほったらかして、読み始めました。

金融コンサルタントから昆虫対戦DVDの作成に携わり、小説家に転向し、芸能プロダクションを設立。
様々なことを経験されている筆者で、その小説も多岐にわたっていて、好きな作家の一人です。
欲望渦巻く裏社会を描いた作品「黒新堂」と、ピュアなラブストーリーや家族愛を描いた作品「白新堂」と呼ばれる両極端な作風があります。
その中でも「黒新堂」は、他の作家にはない、ある意味現実的な人間のグロさを描かれていて、読後感が良い物はほとんどない。
でも、次々の展開が気になり、あっという間に読んでしまう小説。

そんな筆者が書くビジネス本は凄く興味を持ちました。


・自分が開拓した、経験した事は必ず武器として自分の中に残しておく。
・百人に聞いて九十人以上がすぐに賛成することは大成功しない。
・心配事な種ができたらその物事を抱え込んだり逃げたりせずに、真正面から向き合い答えを出す。
・水たまりと川がある。水たまりは澱んでボウフラが湧くのが落ちだが、川は水が綺麗だ。それは、流れがあるからだ。
・何もしなければ傍観者だけれど、何かしてしまったら自分の作為になる。そこで逃げてしまっている人が世の中には多いような気がする。そして、善人で居たいがために何もしないでいるうちに、回りはどんどん進んでいってしまう。
・キャバクラを描いた作品はキャストを主軸にしたものが多い中、私はあえて、「ボーイから高みに上っていく一人の男」を描いた。
・部下を持っているビジネスマンの始点からすると、部下が燃える相手、すなわち、好敵手を見つけてやるということだ。
 「今このタイミングで彼に営業所を持たせたら、新堂への対抗心からかなり業績を上げるだろう」という予測を、ドンぴしゃりのタイミングで当ててきたのだ。
・部下は頼りにしているから不満をぶつけてくる。そこで押さえ込んだところで、部下もそんなところは見抜いている。「器の小さい人なんだな」と思われて終わりだ。
・自分を壊すことには勇気がいる。しかし、だめな自分なら壊さなくては先に進めない。そしてそれができるのは、上司でも仲間でもなく、自分だけだ。
・物事がうまくいかないのは、このように自分だけで理由をつけ、決めつけ、歩みを進めないことが全ての原因だと私は考えている。
・「ある人が嫌いだ」と言うとき、あなたは大嫌いなその「ある人」に支配されてしまっているのだ。あなたが嫌いな相手に振り回されている状態は、あなたは、嫌いなその相手の監督しているドラマに、役者として出演させられている状態なのだ。
・単なる馬鹿正直は絶対にいけない。嘘をつくことで平和が保たれるのであれば、そのうをは
ついたほうが良い。
・ストーリーはシンプルに、仕掛けは複雑に。
・急がば回れは、急いでいる時は回り道をしろという意味では無い。急いでいる時にこそ何倍もの手間暇をかけて努力をしろという事だ。
・引き戸を押し続けていないか?

2010年2月16日火曜日

ナイチンゲールの沈黙/海堂尊

大人気、田口・白鳥コンビの活躍再び!今度の部隊は小児科病棟。病棟一の歌唱力を持つ看護師・浜田小夜の担当患者は、眼の癌---網膜芽腫の子供たち。眼球摘出をせざるを得ない彼らに心を痛めた小夜は、患児のメンタルケアを不定愁訴外来担当の田口に依頼し、小児愚痴外来が始まった。
手術前で精神的に不安定な子供たちのメンタルサポートを、不定愁訴外来担当の田口が行うことになった。時同じくして、小児科病棟の問題児・瑞人の父親が殺され、警察庁から出向中の加納警視正が病院内で捜査を開始する。緊急入院してきた伝説の歌姫と、厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔も加わり、物語は事件解決に向け動き出す。読者を魅了する、海堂尊のメディカル・エンターテインメント
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前作が凄く良かっただけに、同じ登場人物でまた面白いものが書けるのかどうか、読む前から疑問でした。

少しSFの入った内容は、あまり好みではなかったですが、全体的には楽しめました。
加納・玉村の警察コンビや、その他の登場人物もそれぞれキャラが立っているのは、この作者の非常に面白いところだと思いました。

小児科医の奥寺教授、副島助教授、内山医師のやり取りが、今回メッセージを込めたかったところなのかもしれないと思いました。
小児科医(だけではないかもしれませんが。)の実情を訴えるという意味で。

「子供と医療を軽視する社会に、未来なんてないわ。」副島

「副島先生は、ご自分の生活に満足していらっしゃるんですか?」聖美
副島が心の奥底で圧殺し続けてきた何かが、密かに息を吹き返す。
緊急呼び出しのため着替えている自分の後姿を諦めたように見つめる夫の視線。自分の手をそっと握り、しがみついてくる幼い娘の手を振り解いて、冷たい夜の中に出かけていく自分の姿。

「内山君は間違っていない。医者だって人間だ。休みたいときもあるし、嘘をつく時だってある。だが今のままでは、君は将来禍根を残す。その禍根は、君自身の未来に傷痕を残す。悪いことは言わん。ここは老いぼれの顔を立てて、負けておきたまえ。」

「私が死ぬのは運命よ。だけどあなたの運命はまだあなたの手の中にある。あなたが私と同じ道を選ぶのはかってだけど、私はそんなことは望まない。だって、そのときこそ本当に私は死ぬの。私の存在を最後に消滅させるのは瑞人君、あなたなのよ。」

「全面協力知っている我々にそのような暴言を諮れるなら、当院にも考えがあります。」
「女が本気なら、そのときには男は見届けるしかない。それは力が要ることなんだ。」

時折見せる、強気な田口先生が良い。

「どうして俺は、どこでも田口先生なんか、といわれてしまうのだろう。」

ルールは破られるためにあり、それが赦されるのは、未来により良い状態を残せるという確信を、個人の責任で引き受けるときだ。

高階病院長

2010年2月11日木曜日

女王蘭/新堂冬樹

お前の中の天使を封印しろ。そして、夜の世界に咲き誇る女王蘭になれ。
自分を裏切り、父親を死に追い込んだ。「風俗王」藤堂への復讐を誓った優姫は、敵の主戦場である水商売に身を投じた。
日本一のキャバクラ・キャストを目指して、藤堂と対峙する立花の新宿フェニックスに入店。しかしそこには伝説のカリスマキャスト冬海がいた。風俗業界の覇権を巡り熱い火花を散らす二人の男。そして美しい毒牙を磨きあう二人の女。。。。
一瞬もとどまることのない戦いの中で魔性の魅力を身につけていく優姫に、いつしか立花は自らの野望をかけようとしていた。キャストの引き抜き、出店合戦と抗争が激化する中、冬海が突如引退を宣言した!
連続テレビドラマ化されたベストセラー「黒い太陽」の世界に、妖しくも華麗なヒロインが登場!
エンターテインメント会の鬼才・新堂冬樹が、風俗産業の闇に挑んだ傑作サスペンス最新作。
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黒い太陽は、ドラマ化される前に単行本を購入した。

徐々に夜の世界にのめり込み、変わっていく立花の眼つきや雰囲気まで伝わってくる小説でした。

今回は、立花と優姫の戦い。

途中でキャスト同士売り上げを競うグランプリが行われるが、嬢王のQ-1を思い出す。
エンターテインメントとしては、Q-1には遠く及ばないが、「憎しみ」が根底にあるこの作品は、黒い部分の描写は凄まじい。

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「私・・・・社長のことが・・・」
「言うな」
「俺に対しての気持ちで動くうちは、お前は冬海になれない。冬海を超えたいのなら、藤堂をもっと憎め。」
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その女は、女性と呼ぶにはあどけなく、少女と呼ぶには冥い瞳をしていた。
その女は、淑女で居るには傷つきすぎ、娼婦で居るには気高すぎた。
その女は、誰よりも純粋で、誰よりも残酷だった。
その女は、どこまでも優しくなれ、どこまでも非情になれた。
その女は、ある者の瞳には天使に映り、ある者の瞳には悪魔に映った。
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物語を作る際、倉科遼と新堂冬樹では、主題に持ってくる立ち居地が違う、、、
夜の世界での白新堂というのも見てみたいものです。

2010年2月10日水曜日

g@me

ゲームの名は誘拐 の劇場版、

悪い人たちだけの物語を書きたかった、というのがコンセプトらしい。

小説とは少し内容が違いますが、劇場版には悪い人が一人加わったという感じか・・・。

小説のほうが細かいところまで筋が通っていて、「なるほど」と思い、ミステリーとしては面白かった。
劇場版のほうは、主人公の完全勝利、というしっかりした結末になっている。

いずれにしても、誘拐事件について報道がなされる時の展開から、面白い。

2010年2月7日日曜日

ゲームの名は誘拐/東野圭吾

敏腕広告プランナー・佐久間は、クライアントの重役・葛城にプロジェクトをつぶされた。
葛城邸に出向いた彼は、家出して来た葛城の娘と出会う。"ゲームの達人"を自称する葛城に、二人はプライドをかけた勝負を挑む。娘を人質にした狂言誘拐。
携帯電話、インターネットを駆使し、身代金3億円の奪取を狙う。
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東野圭吾は読まず嫌い、というか作品が多いので、全てを制覇したくなる自分としては、手を出したくなかった作家でした。
でも、g@meを観て、それが凄く面白くて、「東野圭吾」ってこういう作品を書く人なんだと思い、読み始めるようになった。

本はだいぶ映画と内容が違ったけど、それでも面白かった。
どちらも違う作品として、面白い。

「登場人物みんなが悪い物語を書きたかった」という作者の意図は、確かにそのとおりで、そこが映画と違う要因となっていたように思う。

すごく論理的で、裏の裏まで読み、誘拐事件を仕立てていくところは、こちらもドキドキして、読み足が速まりました。

最後のどんでん返しからはもう、止まらなかったですねぇ。

葛城も佐久間も、非常に頭が良くて、なるほどなぁ、って素直に感心しながら読みました。

2010年2月4日木曜日

ZOO/乙一

カザリとヨウコ
母親の扱いが極端に違う、双子の姉妹のお話。
母親の家庭内暴力を受けても、無邪気なヨウコが痛々しい。
最後は一斉一代の提案で、恐ろしい結果に、、、
色々疑問や今後が気になるけど、それも短編の良いところか。

SEVEN ROOMS
姉弟が、何者かに襲われ、殺風景な部屋に閉じ込められる。
そこは、七つの部屋が並んであり、毎日一人ずつ殺されては、新しく囚われた人が追加されて行く。

犯人の意図は全くわからんけど、最後のシーンの高笑いは、声が聞こえて来そうだった。

SO-far そ・ふぁー
両親がお互いが見えないかのように、毎日を過ごす。
電車事故があった日。
この話は、かなしいなぁ~。
大人げ無いよ!

日だまりの詩
人類滅亡後のロボットの話。
この話は結構好き。
心というものは、よくわからないものだが、大切だな。

ZOO
まぁ、おかしなやつの話。
自己陶酔の強い人です。
最後は、伏線が多すぎたか、結末が読めた。
ずっと一人称で書かれているのが、不思議な感じでした。

2010年2月1日月曜日

探偵ガリレオ/東野圭吾

突然、燃え上がった若者の頭、心臓だけ腐った男の死体、池に浮かんだデスマスク、幽体離脱した少年・・・・警視庁捜査一課の草薙俊平が、説明のつかない何事件にぶつかったとき、必ず訪ねる友人がいる。帝都大学理工学部物理学科助教授・湯川学。常識を超えた謎に天才科学者が挑む、連作ミステリーのシリーズ第一作。
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本作は、福山雅治と柴咲コウが主演のドラマを見てから読んだ本で、原作は掲示役の草薙が男だったとは知らなかった。

ちょっと、湯川学のキャラがドラマとは違うように感じた。「実に面白い」の台詞とか出てこないし。。。
小説は結構普通だったなぁ。

"草薙は、聡美が使い捨てライターでタバコに火をつける様子を観察した。彼女の右手の中指と薬指に、指輪がはめられていた。"

聡美の指紋を採取したいという意図があったこのシーンの描写はなんか巧いなぁ。
文章の描写で、あえて登場人物の意図を逸らすような感じが、面白いと感じた。

2010年1月19日火曜日

手紙/東野圭吾

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く。
しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる過酷な現実。人の絆とは何か。。。
いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。
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読み進めるうちに、なぜか主人公の直貴が山田孝之に、由美子が沢尻エリカに・・・そうだ、俺はこの小説の映画版を見ていた、っていうのを読み始めてしばらくしてから気づいた・・・。

犯罪加害者の家族ということで、差別を受けて苦しい思いをしているときに、そんなことを何も知らない兄からの手紙が痛々しい。。。

徐々に、兄を拒絶していく主人公の変化と共に、いろいろ考えさせられます。

電気屋さんで働き出してから、倉庫の方へ飛ばされ、社長と出会ったときに、「どういう言葉を投げかけるのか・・・」って凄く気になりました。

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人には繋がりがある。愛だったり、友情だったりするわけだ。それを無断で断ち切ることなど誰もしてはならない。だから殺人は絶対してはならないのだ。そういう意味では自殺もまた悪なんだ。自殺とは、自分を殺すことなんだ。たとえ自分がそれで良いと思っても、周りの者もそれを望んでいるとは限らない。君のお兄さんはいわば自殺をしたようなものだよ。社会的な死を選んだわけだ。しかしそれによって残された君がどんなに苦しむかを考えなかった。衝動的では済まされない。君が今受けている苦難もひっくるめて、君のお兄さんが犯した罪の刑なんだ。

君が兄さんのことを憎むかどうかは自由だよ。ただ我々のことを憎むのは筋違いだといっているだけだ。もう少し踏み込んだ言い方をすれば、我々は、君の事を差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる。全ての犯罪者にそう思い知らせるためにも・・・・
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この一言に、この本で書きたかったことが凝縮されていると思う。

小説が映画化された場合、たいてい小説の方がいいと思うんだけど、ラストシーンを考えると「手紙」に関しては、映画も悪くない。

2010年1月9日土曜日

放課後/東野圭吾

校内の更衣室で生活指導の教師が青酸中毒で死んでいた。
先生を二人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将---犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第二の殺人が・・・・・・。乱歩章受賞の青春推理。
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東野圭吾、処女作って本格推理小説ど真ん中の作品だったんですね。。。

主人公前島の同僚の先生方は、ロールプレイングゲームに出てくる村人のような感じで、不自然にピンポイントな情報をくれるもんだなぁ。
現実的かどうかはともかく、完全に推理小説として愉しむモードに入りました。

アーチェリー部の県大会の件など、アーチェリーの小説が書きたかったんだなって、伝わってきた。

「彼女たちにとってもっとも大切なものは、美しいもの、純粋なもの、嘘の無いものだと思います。それは、時には友情であったり、恋愛であったりします。自分の肉体や顔の場合もあります。・・・逆に言えばこういう大切なものを破壊しようとするもの、彼女たちから奪おうとするものを、最も憎むということになります。」

トリックを確認するシーンや終わり方は好きだな。

読んでいる途中で、「ん?」って思うところが全てクリアになり、意外な終わり方。。。面白かったです。

2010年1月4日月曜日

コンサルタントの習慣術/野口吉昭

習慣とは例えば歯磨きのように、それをしないと気持ち悪い状態のこと。
コンサルタントの「習慣マネジメント」術を学べば、三日坊主を脱して自然に頭が鍛えられ、ビジネス力を高める力が付く。
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0.コンサルタントの習慣術とは何か
レセプターを開いて、常に進化するために
 習慣が「一万時間の継続」を可能にする
 積小為大ー小さな積み重ねが、大事へとつながる
 「練習と実践のサイクル」で能力は高まる

1.習慣をマネジメントする
「習慣=それをしないと気持ちが悪い状態」を実現するために
 目的・目標・手段を「一体化」させるのが習慣化の第一段階
 「見える化」でプロセスをチェックする
 ランドセルサイクルで「見える化」したことを回す
 愚直な継続が、自己革新の肝

2.「考える力」を磨く習慣術
いつも「3つ」に分けて考える思考習慣を持つために
 まず「問題意識」を顕在化させる
 一日三十冊の本を読んで、一日でその道のプロになる。
 場所・時間を変え、視点をずらして考え直す、「熟成」の時間を持つ

3.「主体的な行動力」が実につく習慣術
ロードマップを描いて、着実に成長するために
 仕事は選べなくても、仕事の「やり方」は選べる
 行動することで、自分を変えていく
 「着眼大局・着手小局」で、日々の行動の意味・目的を明確にする

4.「新たなものを作り出す」習慣術
自分に刺激を与えて、パラダイム・シフトするために
 時には「見た目」から変化させる
 旅、ソーシャル活動ー日常を超えた経験の力
 自分の生活に「15%(一日一時間)ルール」を課す

5.「打たれ強い人」になる習慣術
自分もチームも、逆境を乗り越えるために
 普段から、自分を支えてくれる人をつくっておく
 相手軸で考えて自分を「見える化」できれば、トラブルは回避・解決しやすい
 修羅場こそ、シンプルに考えて行動する

6.「人を動かすリーダー」になる習慣術
責任を全うする喜びを感じるために
 組織に属している以上、リーダーは役割と割り切る
 部下のタイプ・成熟度によって、リーダーシップを使い分ける
 リーダーの本気と覚悟が部下を動かす

仕事とセックスのあいだ/玄田有史・斎藤珠里

職場の雰囲気とセックスレス。この両者には実は、深い関係があった。
20~50台の男女800人を対象にした「AERA」意識調査を気鋭の経済学者が徹底分析。日仏で活躍するジャーナリストとの協力タッグで日本を蝕む少子化問題の本質に鋭く迫る。
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結論としては、職場の雰囲気と挫折経験が、セックスへ影響していると言う結果が統計学的に出たということ。

仕事と言うのは、人生の中で大半の時間を占めるから、生活の全てに影響するといっても過言ではないと感じる。

ホントに、仕事は重要だと思う。

そういう意味でも、良い雰囲気、良い職場を選べるよう、自分の能力を高めておくことも必要だと思った。

替天行道-北方水滸伝読本-/北方謙三

人物設定集、年表、筆者のエッセイ・対談、そして担当編集者からの手紙など、貴重な文章が満載。
だが、この本を読み終えた人は、19巻を全て読破し愉しんだ人でも、少ないのではないだろうか・・・・・・。

19巻を読破した人にとっては、年表と人物事典だけでも、買う価値はあるかな。

重力ピエロ/伊坂幸太郎

兄は泉水、2つ下の弟は春、優しい父、美しい母。
家族には、過去につらい出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。
連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。
そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは。
あふれ来る未知の感動、小説の奇跡が今ここに。
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家族の愛情が溢れている。

つらい過去があって、血のつながっていない兄弟。
絵画コンクールで弟が優勝したときの両親の行動や、小さい頃の弟の台詞「俺たち兄弟は最強なんだ。」。
そして、父親の口癖「二人で遊んできたのか?」、そして最後のほうの、「お前は俺に似て、嘘をつくのが下手糞だ。」

そして、動機やストーリーの中で出てくるちょっとした謎の答えは、まさに伊坂幸太郎らしい。
冷静に考えると腑に落ちないけど、何か小説の中では納得してしまう、まさに夢の中の出来事のような感じは重力ピエロにも健在でした。

2010年1月3日日曜日

チーム・バチスタの栄光(下)/海堂尊

東城大学医学部付属病院で発生した連続術中死の原因を探るため、スタッフに聞き取り調査を行っていた万年講師の田口。行き詰まりかけた調査は、高階病院長の差配でやってきた厚生労働省の変人役人・白鳥により、思わぬ展開を見せる。
とんでもない行動で現場をかき回す白鳥だったが、人々の見えなかった一面が次第に明らかになり始め・・・・・・。医療小説の新たな可能性を切り開いた傑作。
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下巻からさらに面白くなってきた。

白鳥、、、良いなぁ。こういう人、結構好きです。

上巻の段階で、キャラクターのイメージが明確にありましたけど、それは田口講師からの目線。
白鳥が入ってから、2回目の聞き取り調査で少しずつ変わっていく感覚がまたリアル。

作者は勤務医とのことですが、最後の桐生先生と田口先生のやり取りや、犯人の動機などは、医師ならではの視点を感じます。

<火事を消すために、爆弾を爆発させて風圧で吹き消すみたいなやり方。>
<おっしゃるとおりです。でも数字にも意味はあります。それは一人の外科医の航跡。未来の外科医が目指す、加賀や空ける銀嶺への道標なんです。>

チーム・バチスタの栄光(上)/海堂尊

東城大学医学部付属病院の"チーム・バチスタ"は心臓移植の大体手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。
ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。
医療過誤しか殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。第4回「このミス」大賞受賞、一気にベストセラー入りした話題のメディカル・エンターテインメント。
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白鳥が登場する前まで。

チームバチスタの面々を初め、主人公の田口講師、病院長の高階、看護士の藤原さんなど、すごいキャラが立っていて、イメージがしやすい。
チームバチスタへの聞き取り調査や、酒井や近いところで働く兵藤など、田口との過去のイザコザを交えつつ、登場人物のイメージが浮かびあがってくる。

軽快に読めました。


<話すと言うのは一つの習慣だ。小さなきっかけではずみがつくと、こらえきれなくなる。
俺は、相手が何か言ってくれなければ、自分には何もできない、と答えた。>

<回答は拒否されてもかまわない。なぜなら拒否も、その人の姿勢を表しているから。大切なことは軽々しく口にすべきで得は無いと考えている人は、結構多いものだ。>


<火葬後に、死因を調べてくれって言っているようなものですよ。>