2010年1月19日火曜日

手紙/東野圭吾

強盗殺人の罪で服役中の兄、剛志。弟・直貴のもとには、獄中から月に一度、手紙が届く。
しかし、進学、恋愛、就職と、直貴が幸せをつかもうとするたびに、「強盗殺人犯の弟」という運命が立ちはだかる過酷な現実。人の絆とは何か。。。
いつか罪は償えるのだろうか。犯罪加害者の家族を真正面から描き切り、感動を呼んだ不朽の名作。
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読み進めるうちに、なぜか主人公の直貴が山田孝之に、由美子が沢尻エリカに・・・そうだ、俺はこの小説の映画版を見ていた、っていうのを読み始めてしばらくしてから気づいた・・・。

犯罪加害者の家族ということで、差別を受けて苦しい思いをしているときに、そんなことを何も知らない兄からの手紙が痛々しい。。。

徐々に、兄を拒絶していく主人公の変化と共に、いろいろ考えさせられます。

電気屋さんで働き出してから、倉庫の方へ飛ばされ、社長と出会ったときに、「どういう言葉を投げかけるのか・・・」って凄く気になりました。

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人には繋がりがある。愛だったり、友情だったりするわけだ。それを無断で断ち切ることなど誰もしてはならない。だから殺人は絶対してはならないのだ。そういう意味では自殺もまた悪なんだ。自殺とは、自分を殺すことなんだ。たとえ自分がそれで良いと思っても、周りの者もそれを望んでいるとは限らない。君のお兄さんはいわば自殺をしたようなものだよ。社会的な死を選んだわけだ。しかしそれによって残された君がどんなに苦しむかを考えなかった。衝動的では済まされない。君が今受けている苦難もひっくるめて、君のお兄さんが犯した罪の刑なんだ。

君が兄さんのことを憎むかどうかは自由だよ。ただ我々のことを憎むのは筋違いだといっているだけだ。もう少し踏み込んだ言い方をすれば、我々は、君の事を差別しなきゃならないんだ。自分が罪を犯せば家族をも苦しめることになる。全ての犯罪者にそう思い知らせるためにも・・・・
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この一言に、この本で書きたかったことが凝縮されていると思う。

小説が映画化された場合、たいてい小説の方がいいと思うんだけど、ラストシーンを考えると「手紙」に関しては、映画も悪くない。

2010年1月9日土曜日

放課後/東野圭吾

校内の更衣室で生活指導の教師が青酸中毒で死んでいた。
先生を二人だけの旅行に誘う問題児、頭脳明晰の美少女剣道部の主将、先生をナンパするアーチェリー部の主将---犯人候補は続々登場する。そして、運動会の仮装行列で第二の殺人が・・・・・・。乱歩章受賞の青春推理。
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東野圭吾、処女作って本格推理小説ど真ん中の作品だったんですね。。。

主人公前島の同僚の先生方は、ロールプレイングゲームに出てくる村人のような感じで、不自然にピンポイントな情報をくれるもんだなぁ。
現実的かどうかはともかく、完全に推理小説として愉しむモードに入りました。

アーチェリー部の県大会の件など、アーチェリーの小説が書きたかったんだなって、伝わってきた。

「彼女たちにとってもっとも大切なものは、美しいもの、純粋なもの、嘘の無いものだと思います。それは、時には友情であったり、恋愛であったりします。自分の肉体や顔の場合もあります。・・・逆に言えばこういう大切なものを破壊しようとするもの、彼女たちから奪おうとするものを、最も憎むということになります。」

トリックを確認するシーンや終わり方は好きだな。

読んでいる途中で、「ん?」って思うところが全てクリアになり、意外な終わり方。。。面白かったです。

2010年1月4日月曜日

コンサルタントの習慣術/野口吉昭

習慣とは例えば歯磨きのように、それをしないと気持ち悪い状態のこと。
コンサルタントの「習慣マネジメント」術を学べば、三日坊主を脱して自然に頭が鍛えられ、ビジネス力を高める力が付く。
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0.コンサルタントの習慣術とは何か
レセプターを開いて、常に進化するために
 習慣が「一万時間の継続」を可能にする
 積小為大ー小さな積み重ねが、大事へとつながる
 「練習と実践のサイクル」で能力は高まる

1.習慣をマネジメントする
「習慣=それをしないと気持ちが悪い状態」を実現するために
 目的・目標・手段を「一体化」させるのが習慣化の第一段階
 「見える化」でプロセスをチェックする
 ランドセルサイクルで「見える化」したことを回す
 愚直な継続が、自己革新の肝

2.「考える力」を磨く習慣術
いつも「3つ」に分けて考える思考習慣を持つために
 まず「問題意識」を顕在化させる
 一日三十冊の本を読んで、一日でその道のプロになる。
 場所・時間を変え、視点をずらして考え直す、「熟成」の時間を持つ

3.「主体的な行動力」が実につく習慣術
ロードマップを描いて、着実に成長するために
 仕事は選べなくても、仕事の「やり方」は選べる
 行動することで、自分を変えていく
 「着眼大局・着手小局」で、日々の行動の意味・目的を明確にする

4.「新たなものを作り出す」習慣術
自分に刺激を与えて、パラダイム・シフトするために
 時には「見た目」から変化させる
 旅、ソーシャル活動ー日常を超えた経験の力
 自分の生活に「15%(一日一時間)ルール」を課す

5.「打たれ強い人」になる習慣術
自分もチームも、逆境を乗り越えるために
 普段から、自分を支えてくれる人をつくっておく
 相手軸で考えて自分を「見える化」できれば、トラブルは回避・解決しやすい
 修羅場こそ、シンプルに考えて行動する

6.「人を動かすリーダー」になる習慣術
責任を全うする喜びを感じるために
 組織に属している以上、リーダーは役割と割り切る
 部下のタイプ・成熟度によって、リーダーシップを使い分ける
 リーダーの本気と覚悟が部下を動かす

仕事とセックスのあいだ/玄田有史・斎藤珠里

職場の雰囲気とセックスレス。この両者には実は、深い関係があった。
20~50台の男女800人を対象にした「AERA」意識調査を気鋭の経済学者が徹底分析。日仏で活躍するジャーナリストとの協力タッグで日本を蝕む少子化問題の本質に鋭く迫る。
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結論としては、職場の雰囲気と挫折経験が、セックスへ影響していると言う結果が統計学的に出たということ。

仕事と言うのは、人生の中で大半の時間を占めるから、生活の全てに影響するといっても過言ではないと感じる。

ホントに、仕事は重要だと思う。

そういう意味でも、良い雰囲気、良い職場を選べるよう、自分の能力を高めておくことも必要だと思った。

替天行道-北方水滸伝読本-/北方謙三

人物設定集、年表、筆者のエッセイ・対談、そして担当編集者からの手紙など、貴重な文章が満載。
だが、この本を読み終えた人は、19巻を全て読破し愉しんだ人でも、少ないのではないだろうか・・・・・・。

19巻を読破した人にとっては、年表と人物事典だけでも、買う価値はあるかな。

重力ピエロ/伊坂幸太郎

兄は泉水、2つ下の弟は春、優しい父、美しい母。
家族には、過去につらい出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。
連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。
そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは。
あふれ来る未知の感動、小説の奇跡が今ここに。
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家族の愛情が溢れている。

つらい過去があって、血のつながっていない兄弟。
絵画コンクールで弟が優勝したときの両親の行動や、小さい頃の弟の台詞「俺たち兄弟は最強なんだ。」。
そして、父親の口癖「二人で遊んできたのか?」、そして最後のほうの、「お前は俺に似て、嘘をつくのが下手糞だ。」

そして、動機やストーリーの中で出てくるちょっとした謎の答えは、まさに伊坂幸太郎らしい。
冷静に考えると腑に落ちないけど、何か小説の中では納得してしまう、まさに夢の中の出来事のような感じは重力ピエロにも健在でした。

2010年1月3日日曜日

チーム・バチスタの栄光(下)/海堂尊

東城大学医学部付属病院で発生した連続術中死の原因を探るため、スタッフに聞き取り調査を行っていた万年講師の田口。行き詰まりかけた調査は、高階病院長の差配でやってきた厚生労働省の変人役人・白鳥により、思わぬ展開を見せる。
とんでもない行動で現場をかき回す白鳥だったが、人々の見えなかった一面が次第に明らかになり始め・・・・・・。医療小説の新たな可能性を切り開いた傑作。
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下巻からさらに面白くなってきた。

白鳥、、、良いなぁ。こういう人、結構好きです。

上巻の段階で、キャラクターのイメージが明確にありましたけど、それは田口講師からの目線。
白鳥が入ってから、2回目の聞き取り調査で少しずつ変わっていく感覚がまたリアル。

作者は勤務医とのことですが、最後の桐生先生と田口先生のやり取りや、犯人の動機などは、医師ならではの視点を感じます。

<火事を消すために、爆弾を爆発させて風圧で吹き消すみたいなやり方。>
<おっしゃるとおりです。でも数字にも意味はあります。それは一人の外科医の航跡。未来の外科医が目指す、加賀や空ける銀嶺への道標なんです。>

チーム・バチスタの栄光(上)/海堂尊

東城大学医学部付属病院の"チーム・バチスタ"は心臓移植の大体手術であるバチスタ手術専門の天才外科チーム。
ところが原因不明の連続術中死が発生。高階病院長は万年講師で不定愁訴外来の田口医師に内部調査を依頼する。
医療過誤しか殺人か。田口の聞き取り調査が始まった。第4回「このミス」大賞受賞、一気にベストセラー入りした話題のメディカル・エンターテインメント。
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白鳥が登場する前まで。

チームバチスタの面々を初め、主人公の田口講師、病院長の高階、看護士の藤原さんなど、すごいキャラが立っていて、イメージがしやすい。
チームバチスタへの聞き取り調査や、酒井や近いところで働く兵藤など、田口との過去のイザコザを交えつつ、登場人物のイメージが浮かびあがってくる。

軽快に読めました。


<話すと言うのは一つの習慣だ。小さなきっかけではずみがつくと、こらえきれなくなる。
俺は、相手が何か言ってくれなければ、自分には何もできない、と答えた。>

<回答は拒否されてもかまわない。なぜなら拒否も、その人の姿勢を表しているから。大切なことは軽々しく口にすべきで得は無いと考えている人は、結構多いものだ。>


<火葬後に、死因を調べてくれって言っているようなものですよ。>