2009年11月22日日曜日

水滸伝(19)/北方謙三

[宋江]

最終決戦の秋が訪れる。童貫はその存在をかけて総攻撃を仕掛けてきた。梁山泊は宋江自らが出陣して迎え撃つ。一方、流花寨にも趙安が進攻し、花栄が視力を尽くし防戦していた。壮絶な戦いによって同志が次々と戦死していく中、遂に童貫の首を取るチャンスが訪れる。史進と楊令は、童貫に向かって流星のごとく駆けた。この国に光は射すのか。漢たちの志は民を救えるのか。
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バランスの良い呼延灼。
劉唐の死に際し、自分の過去を語ってからどこか人間味が増してきた公孫勝。
花栄、しぶとい趙安。

済まんな。きれいに殺してやれなかった。


杜興。
呉用殿は、お前らにはわからんだろうが、そういうことは遺漏れなくやる。呉用殿がいて、初めてできることじゃな。
お前ら、暴れるだけでなく、頭の中身も搾り出してみよ。梁山泊の命運は話し合って決めるべきであろうが。

李逵だけは死なない。俺はそう思っていました、宋江様。


呼延灼から、届けられた、見よ。
童貫の兜だそうだ。斬ったのは、吹毛剣。ほんのわずか下だったら、首を切っていたことになったはずだ。

呼延灼が、なぜこれを送ってきたのか、私には読めぬ。童貫の首を獲るのは難しくない、といっているようでもあるし、梁山泊の運はここまでだった、といっているようでもある。




水滸伝(18)/北方謙三

[史進]

童貫軍の猛攻撃が始まった。呼延灼は秘策を持ってそれを迎え撃つ。梁山湖では、李俊率いる水軍が、巨大な海鰍船と対峙していた。梁山泊に上陸される危険を背負いながら、幾百の線群に挑む。一方、二竜山も陥落の危機を迎えていた。超安の侵攻を一年以上耐え抜いた秦明は、総攻撃を決意する。楊春、解宝が出撃、そして、青面獣の名を継ぐ楊令が初めて騎馬戦の指揮を取る。
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「最後まで諦めないのが、軍人だ。血の一滴が残っている限り、戦い続けるのが軍人だ。」

秦明、解珍、郝思文が二竜山と共に最期を迎える。
耐える戦いばかりだった、秦明。
野戦の場面も見たかったものです。

丁得孫のような死に方もあり?

どうやれば、海鰍船がとめられるのか。
童猛は、李俊からの指令を待つしかなかった。いま、思いつくことは何も無かった。
「これだから俺はだめなのだ。」
最後の最後で諦めてしまうところがあった。
「どうすればいい、兄者?」

そのとき、李俊の船に、旗が上がった。
「連環馬?」

水の上の連環馬など、何度か話し合って準備はしてきたが、実際にやるとは思ってもいなかった。

頼むから、乗って逃げてくれ。生涯に一度くらい、女を助けた男になりたい。
俺は、女の命を救いたいのだ。女の命も救えない男に、俺をしないでくれ。

呼延灼が全員を手で制した。
「林冲騎馬隊は、楊令が指揮を取る。」

あいつが林冲より強くなったら、どうしようと思う。一番心配していたのは、林冲だったろうがな。まだ自分のほうが強いと思えるときに、くたばった。ほっとしているだろう。





水滸伝(17)/北方謙三

[関勝]

童貫と鄷美が、怒涛の猛攻を開始した。董平率いる双頭山が総力を挙げて迎え撃つが、次々と同志は討たれていく。更なる禁軍の進行を止めるため、候健は偽の講和案を進めていた。巧みに高俅を信じさせるが、そこには思わぬ落とし穴が待ち受けている。一方、致死軍と高廉の軍の決戦がまじかに迫っていた。闇の中で両者は息を潜め、刃を交えるときを待っている。
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「その犬にだまされ、いいように利用されていたお前は犬以下ではないか。」

「おまえにかしずきながら、いつも反吐が出るような思いがしたものだ。それも、もうなくなる。よいか、高俅。梁山泊の志は、不滅なのだ。それは、人の心の清い部分に宿るものだからだ。お前の野望は、酷い汚れた部分に宿っている。後世、お前はどうしようもない男として、扱われるのだろうな。犬以下の馬鹿として。」


「共に戦えないのは無念であるが、わが魂魄はこの梁山泊にある」

「私の身代わりになって、劉唐が死んだからかな。劉唐に私は弟に対するような感情を持っていた、という気がする。」
「俺は何も聞かなかったよ、公孫勝。お前は虫の好かない、いやな野郎のままだ。こういう話は、お前らしくないしな。」

「志を全うしようと思えば、病んでもならんのだ、楊令。俺は病んだ。腹の中にいる病ごときに殺されるのが無念でならん。」




2009年11月21日土曜日

水滸伝(16)/北方謙三

[公孫勝]

梁山泊は戦によって、潰滅寸前にまで追い込まれていた。回復時を稼ぐため、候健と戴宗が偽の講和案を持って高俅に近づく。
また、晁蓋を殺した史文恭が再び動き出した。名を変え、商人に成りすまし、次なる標的のそばで暗殺の機を待ち続けている。それに対し、公孫勝は袁明の首を狙っていた。堅牢な守りをかいくぐり、いま、致死軍が青蓮寺を急襲する。
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「豹子頭と九紋竜が、二人そろって私に頭を下げている。そう思うこととするか。」

「兵たちを、あれほどしっかり見られるのに、倅は見えぬか。どうせ、まだ何か足りないとでも思っているのだろう。何が足りぬか言ってやろうか。将校であるということが足りぬのだ。だから、将校にすればよい。」

郝思文と郝瑾のやり取りに涙。

瞬間、全身の毛が逆立ったようになった。見えたのは、剣を抜き放った扈三娘の姿だった。

好きになった男を殺す史文恭、、、柴進、

時ができれば、済州の人の出入りを見張っていた。

なかなかのものだと思うぞ、劉唐。わしを追って、こうして捕らえた。わしはお前が目の前に現れるまで、これほど執拗に追われていることさえ気づかなかったのだからな。

洪清と燕青、公孫勝と袁明、今までに無い闇の戦いが。
「失礼なことを申しました。おいておられるなど、とんでもないことでした。」



水滸伝(15)/北方謙三

[花栄]

どの塞が崩れても、梁山泊は壊滅する。極限状況の中、各塞は必死の防戦をしていた。特に激しい攻撃に晒された流花寨、花栄らが死を覚悟して戦い続ける。しかし、官の水軍の進行が始まり、それも限界が近づいていた。一方、宣賛は起死回生の策を考え出す。ひそかに李応や索超、扈三娘を北京大名府に急行させた。梁山泊の命運を握る作戦が今、静かに始まる。
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宋清、楽和、李応に、朱武、欧鵬、穆弘など多くの者が亡くなって行った。
穆弘が風にさえぎられ、無くなる。

流花寨での防戦、双頭山での兵糧死守、二竜山での膠着。
花栄の矢、黄信・単廷珪の復活など、目まぐるしい戦い。

宿元景の最期。


2009年11月18日水曜日

水滸伝(14)/北方謙三

[張清]

梁山泊は、
威勝の田虎の反乱が、青蓮寺の策略だと看破した。近くの石梯山に魯達や鄒淵らを派遣し、切り崩しを図る。しかし、田虎に雇われた張清が精強な傭兵部隊を率いて、立ちはだかった。一方、官は梁山泊の完全殲滅を決意する。禁軍・地方軍・水軍合わせて、20万の軍兵を投入してきた。兵力で圧倒的に劣る梁山泊に対し、空前の規模の攻撃がついに始まる。
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鮑旭の機転で、飛竜軍の救援に向かった扈三娘が矢で射られようとしたところを、またもや王英が救う。
張平が出てきた。
二竜山の燕順が、清風山で退路を断ち、董万の進入を防ぐ。

李俊の活躍がいつになるのか、、、気になる。


水滸伝(13)/北方謙三

[朱仝]

官は十万以上の兵で、梁山泊への進行を開始した。流花寨には超安の軍が押し寄せ、呼延灼、関勝、穆弘がそれを迎え撃つ。呉用は流花寨の防衛に執心するが、官の狙いは別のところにあった。
董万の大軍が息を潜め、急襲の時を待っている。一方、孔明と童猛は官の造船所の襲撃を計画した。強固な防備の中、百名の寡兵で潜入を試みる。
そして、ついに董万が疾風のごとく動き出した。
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奇襲に晒された双頭山。
董万の羊や敵兵の死体を使って罠を回避するなど慎重な攻めでの、李忠・朱仝の最期。

崩れ落ちた船の先が孔明の上に落ち、一度見えなくなったものの、炎の中で立ち上がり、剣を中天から二度振り下ろす。

いよいよ、総力戦の前触れ。


2009年11月16日月曜日

水滸伝(12)/北方謙三

[盧俊義]

青蓮寺は執拗に闇塩の道の探索を続け、ついに盧俊義の捕縛に成功した。過酷な拷問を受ける盧俊義を救うために、燕青は飛竜軍とともに救出へ向かう。一方、北京大名府に残る闇塩の道の証拠を回収すべく、宋江自らが梁山泊全軍を率いて出動する。それに対して青蓮寺は、雄州の関勝将軍に出陣の命を出した。宣賛と策を練り、梁山泊の盲点を見極めた関勝が静かに進軍する。
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「私はここで、弔いの言葉を述べるべきであろう。しかし、そんなことはしたくない。私は、ただ戦い続ける。晁蓋と共に戦い続ける。」

「その弔旗が、見るものを奮い立たせた。打ちひしがれていたものたちに、力を与えた。私は、はじめて旗の意味を知ったような気がする。」

燕青が、盧俊義を担ぎ、一人で梁山泊まで連れてくる。
わざと闇塩の道の秘密の反駁を間違えたり、必死に盧俊義の気力を持たせようとする姿、梁山泊に到着したときには、盧俊義よりも危険な状態だったと言う。

物語の中で、印象が徐々に、着実に変わった人物の一人で、非常にカッコいい。




2009年11月15日日曜日

水滸伝(11)/北方謙三

[索超]

梁山泊の頭領の対立が深刻化していた。兵力をもっと蓄えたい宋江。今すぐ攻勢に転じるべきだと主張する晁蓋。しかし、青蓮寺はひそかに暗殺の魔手を伸ばしていた。刺客の史文恭は、梁山泊軍に一人潜入し、静かにその気を待ち続ける。滾る血を押さえきれない晁蓋は、自ら本隊を率いて、双頭山に進行してきた官軍を一蹴し、さらに平原の街を落とした。
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杜興が戦で心に傷を負った戦士たちに声を掛ける。

新でも泣いてくれるものが一人も居ない。そんな風に自分が死ぬのがお前は怖いのだ。だから、その男のために泣いてやれ。自分が死んだときも誰かが泣いてくれると信じろ。

史文恭の元へ、劉唐と楽和が向かい、晁蓋の元へ誘う前に色々と試すシーンは、水滸伝の中でも印象に残っているシーンの一つ。