2010年4月18日日曜日

メンタル・コーチング/織田淳太郎

矢野が右翼の守備に着いた直後だった。渡辺が投じた初球を本多がフルスイングした。快音を発した打球が、右翼へと大きく舞った。矢野が背走した。実況アナウンサーが、「これは文句なし!」と声を張り上げた。

フォアTheチームという言葉がありますが、これをみんなで協力しなければならないからと言う善悪の邪念で考えてしまうと、邪念みたいなものが生まれる事があります。
一方、もうやるっきゃ無いという心境に追い込まれることがある。打算や駆け引きなく、みんながそういう気持ちになった時、非常に面白いことが起こるんです。チーム全体が一つの生き物となって、大きな波に乗り、一つの方向へと突き進む訳ですね。もちろんこれは人生にも言えることです。

キャリアは計画通りにいかないもの。
職業目標を持たなければやる気がわかないというのは、未来の配偶者がわからないとデートができないと言っているようなものです。

怒っている子には、表層意識、中層意識、深層意識の三つがある。
サボるというやってはいけないことをやっているから怒る。
注意しないと自分が怒られる。
自分もやりたく無い。

いくらプラス思考とはいえ、不安感情があるにもかかわらず、それを自分のものでは無いと切り捨ててしまう暗示をかけてしまうと、そのエネルギーが内側にたまって行くばかり。どこかで昇華させてあげないと、それが現実に投影されてしまう。

情感を表現したり、手放したりすることが、生命力アップにつながる。

イノベーションのジレンマ 日本「半導体」敗戦/湯之上隆

エルピーダメモリ1社を残してDRAMから撤退した日本半導体産業。
1980年代半ばに、世界を制した技術と品質は、いまや不況のたびに膨大な赤字を生み出す元凶と化した。
一体、なぜ、こんなことになってしまったのか?
半導体産業の技術者として出発した社会科学者が、今、その全てを解明する。
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非常に興味深かった。

過剰技術・過剰品質の病気。
半導体生産に関する3つの階層。
要素技術:プロセス技術(微細加工技術など)
インテグレーション技術:工程フロー構築技術
生産技術:製造・作りこみ技術(歩留まり)

日本の技術力は、他国に負けないと言うが、高性能、高品質に偏りがち。
要素技術は、技術開発力は高いが、オーバースペック気味。
インテグレーション技術は、高性能実現のため、工程数が多い。
生産技術は、歩留まりよりも高品質優先。

安く作る技術というのは、圧倒的に負けているが、日本の技術者は、「安く作る技術」という観点が無いようだ。

韓国に負けた日本半導体メーカーの言い訳。
「経営、戦略、コスト競争力で負けた」「技術では負けていなかった」という2点に集約。
このコスト競争力というのを、技術ではなく、規模の経済やそれを実現するための投資に影響すると考えている。

スパコン用に長期寿命保障のDRAMを作り、世界を凌駕した日本の半導体メーカ。

しかし、微細化が進むにつれて、パソコンというものが、一国に一台が、一社に一台になり、一家に一台になり、一人に一台になった。
そこで、どうなるかというと、高品質のDRAMなぞ、もはや必要ないということだ。

それに気づいた韓国や台湾、米国メーカは、低コストで要求に合う品質のDRAMを作る「技術」で対抗し、日本を抜き去っていった。

しかし、高品質・高性能が「技術」だと思い込んでいる日本のメーカーには、「技術では負けないのに、コスト競争力、戦略で負けた」という認識が出来上がる。

悪いところが分かっていないのを、直すというのは極めて難しい。


韓国サムスンの研究開発→量産開発のパイプライン組織構造は非常に面白い。
あとは、マーケティングが非常に多い。これは、単に市場調査を行うのではない。例えば、中国担当のまーけったならば、まず中国に1~2年住み、中国語を話せるようになり、中国人と同じものを食べ、中国人が一体どのような嗜好を持つのかを学ぶ。
日本では、各社に数人くらいのマーケッタで、窓際族扱いである。

エルピーダの坂本社長は業界以外でも有名かもしれないが、本書で実際の社員の声が圧倒的に変わっていく様を知って、見事な回復振りに驚いた。

半導体産業自体はなくならない。
ネジ・クギと同然になっていくだろうから、これからコスト競争力がいっそう高まるのは目に見えている。

2010年4月17日土曜日

サッカーとイタリア人/小川光夫

毎週どこかで日韓戦が行われている国。イタリアとはそんな国なのである。

サウロ・トマ、スペルガの悲劇後、復帰第一戦。
スタジアムまで続く道の菱和w期の建物のバルコニー全てが、トリノのカラー、グラナータ一色に染められていたんだ。そして、その全てに人々があふれかえり、我々にあらん限りの声援を送っていたんだよ。

ウディネーゼの「ジーコか、オーストリアか!」

カルチョの首都、ミラノ:インテル、ミラン
カルチョのパイオニア、ジェノヴァ:ジェノア、サンプドリア
スペルガの悲劇、トリノ:ユヴェントス、トリノ
ロバが飛んだ日、ヴェローナ:ヘラス、キエーヴェ
ジーコかオーストリアか、ウディネーゼ:ウディネーゼ
トスカーナの覇権、トスカーナ:シエナ、リヴォルノ、エンポリ、フィオレンティーナ
シンデレラ・ストーリーの終焉:パルマ、ボローニャ
"東洋の神秘"との幸せな出会い:ペルージャ
"神"とのラブストーリ:ナポリ
古の旅人は、「ナポリを見てから死ね」と言い、このヴェズーヴィオ火山の裾野に広がる港町の美しさを称えた。イタリア全土でも、ローマ、ミラノに続く3番目の規模を誇る。
祖母がナポリ出身のマラドーナ。相思相愛の移籍後、約8万人収容のスタディオ・サン・パオロの86%が年間シーとして予約済み。
「初優勝の後、スパッカ・ナポリをはじめ町全体がまさに無法地帯と化した。」ナポリの市営墓地の壁に、そこに眠る使者たちに向けて、「お前たちは、本当に大事な瞬間を見逃した!」と。
そして、90年W杯イタリア大会、アルゼンチン代表キャプテンとしてマラドーナは、地元イタリアを破る大金星。奇しくもそのときの会場は、ナポリ。
地元での優勝を確実視していたイタリア人は、このマラドーナの"ミラコーロ"を赦さなかった。
それ以降、バッシングが始まり、イタリアから追放される。
しかし、ナポリの人々は、マラドーナへの愛情が消えうせることはなかった。
麻薬中毒で昏睡状態と知ると、スタジアムに「ディエゴ、君の復活を信じている。」「俺たちは、いつも君と一緒だ」とエールを送った。
南部の灯を消すな:バーリ、レッジーナ、レッチェ、カタンザーロ
2つの島のカルチョ、シチリア、サルデーニャ:カターニア、パレルモ、メッシーナ、カリアり
最も過激なデルビー、ローマ:ASローマ、ラツィオ

2010年4月11日日曜日

秘密/東野圭吾

妻・直子と小学5年生の娘・藻奈美を乗せたバスが崖から転落。妻の葬儀の夜、意識を取り戻した娘の体に宿っていたのは、死んだはずの妻だった。その日から杉田家の切なく奇妙な"秘密"の生活が始まった。
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1人の女性が子供に戻って、人生をやり直す。
ただ、娘の体で、夫をお父さんとして・・・。

小学生の頃は、つい、大人として振舞ってしまう失敗をしたり、直子が後悔をやり直すために、勉学に励む姿など、微笑ましくプラスの部分も多くあった。

小学校の先生の写真を見つけたとき、直子は何も言わなかった。
再婚話が出た時は、「俺にはお前がいるから」と言った。

だが、高校生になる頃から一変する。

直子の父親の蕎麦を食べたとき。

娘が男の子と電話をしたり、デートの約束をしたりするのに干渉するお父さん。
この場合は彼にとっては妻であり、娘であり、、、複雑。

俺よりあいつといる方が楽しいのか?

「お前は普通にする権利なんかない」

自分で言葉を発しながら、気持ちのいいものではないだろうなぁ。

"あぁ、言っちゃったよ~~、でも気持ちは分かるなぁ"、っていう感じでした。


物語の終わり方としてはしつこくなく、スッキリしていて好きだなぁ、、、タッチのようなラストシーン。
広末さんも解説で言ってますが、カップルで感想を述べ合ったとすると、色んな議論が巻き起こりそうです。

やり直しの人生をどう生きるか、、、
再婚話が出たときに、どうするか、、、
綺麗な女性の写真を夫の本の間から見つけたときに、妻はどうするか、、、
娘(妻)が高校生の時の、夫の束縛をどう思うか、、、
夫の「藻奈美」として扱う決断をどう思うか、、、
その後の直子の決断をどう思うか、、、
直子の決断を推定したときに、どうするか、、、

事件の被害者に対する考えは、藤崎さんのルームミラーの2つの人形が、全てを語っていると思う