2010年4月18日日曜日

イノベーションのジレンマ 日本「半導体」敗戦/湯之上隆

エルピーダメモリ1社を残してDRAMから撤退した日本半導体産業。
1980年代半ばに、世界を制した技術と品質は、いまや不況のたびに膨大な赤字を生み出す元凶と化した。
一体、なぜ、こんなことになってしまったのか?
半導体産業の技術者として出発した社会科学者が、今、その全てを解明する。
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非常に興味深かった。

過剰技術・過剰品質の病気。
半導体生産に関する3つの階層。
要素技術:プロセス技術(微細加工技術など)
インテグレーション技術:工程フロー構築技術
生産技術:製造・作りこみ技術(歩留まり)

日本の技術力は、他国に負けないと言うが、高性能、高品質に偏りがち。
要素技術は、技術開発力は高いが、オーバースペック気味。
インテグレーション技術は、高性能実現のため、工程数が多い。
生産技術は、歩留まりよりも高品質優先。

安く作る技術というのは、圧倒的に負けているが、日本の技術者は、「安く作る技術」という観点が無いようだ。

韓国に負けた日本半導体メーカーの言い訳。
「経営、戦略、コスト競争力で負けた」「技術では負けていなかった」という2点に集約。
このコスト競争力というのを、技術ではなく、規模の経済やそれを実現するための投資に影響すると考えている。

スパコン用に長期寿命保障のDRAMを作り、世界を凌駕した日本の半導体メーカ。

しかし、微細化が進むにつれて、パソコンというものが、一国に一台が、一社に一台になり、一家に一台になり、一人に一台になった。
そこで、どうなるかというと、高品質のDRAMなぞ、もはや必要ないということだ。

それに気づいた韓国や台湾、米国メーカは、低コストで要求に合う品質のDRAMを作る「技術」で対抗し、日本を抜き去っていった。

しかし、高品質・高性能が「技術」だと思い込んでいる日本のメーカーには、「技術では負けないのに、コスト競争力、戦略で負けた」という認識が出来上がる。

悪いところが分かっていないのを、直すというのは極めて難しい。


韓国サムスンの研究開発→量産開発のパイプライン組織構造は非常に面白い。
あとは、マーケティングが非常に多い。これは、単に市場調査を行うのではない。例えば、中国担当のまーけったならば、まず中国に1~2年住み、中国語を話せるようになり、中国人と同じものを食べ、中国人が一体どのような嗜好を持つのかを学ぶ。
日本では、各社に数人くらいのマーケッタで、窓際族扱いである。

エルピーダの坂本社長は業界以外でも有名かもしれないが、本書で実際の社員の声が圧倒的に変わっていく様を知って、見事な回復振りに驚いた。

半導体産業自体はなくならない。
ネジ・クギと同然になっていくだろうから、これからコスト競争力がいっそう高まるのは目に見えている。

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