2010年8月8日日曜日

天空の蜂/東野圭吾

奪取された超大型特殊ヘリコプターには、爆薬が満載されていた。無人操縦でホバリングしているのは、稼働中の原子力発電所の真上。日本国民全てを人質にしたテロリストの脅迫に対し、政府が下した非常の決断とは。そしてヘリの燃料が尽きるとき・・・。驚愕のクライシス、圧倒的な緊迫感で魅了する傑作サスペンス。
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東野圭吾、やはり面白い。

社会的メッセージを、高度な技術的要素を絡めて話を展開するあたり・・・個人的には凄く好きな作品でした。

フライ・バイ・ワイヤー技術を初めて搭載した、超大型特殊ヘリコプターのお披露目当日の朝、何ものかに遠隔操作され、原子力発電所の真上で停滞。
そして、犯人から、「全国の原子力発電所を止めよ、さもなければヘリを墜落させる」との脅迫状が届く。
わずか10時間足らずの間に、犯人捜しに奔走する警察や、ヘリに乗ってしまっていた子供を助けるシーンなど、手に汗握る展開だった。
そして、新型ヘリコプターや、原子力発電に関する技術的な記述はさすが。
個人的には、こういう現実的な技術が関連してくる小説を書き続けていって欲しいと思う。

「世の中には無くちゃ困るが、まともに目の前にあると嫌われるものがある。」

メインテーマは、原子力発電所。原子力発電所で働く人(清掃者、運営者)、発電所を作る技術者、反原発派の人々、そして無関心なその他大勢、と様々な視点からの原子力発電所が描かれている。

そして、一番大きな問題として浮かび上がってくるのが、犯人の動機に繋がってくる。

「沈黙する群衆の、あの不気味な仮面に向かって、石の一つでも投げつけることができないだろうか?」

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