2010年2月16日火曜日

ナイチンゲールの沈黙/海堂尊

大人気、田口・白鳥コンビの活躍再び!今度の部隊は小児科病棟。病棟一の歌唱力を持つ看護師・浜田小夜の担当患者は、眼の癌---網膜芽腫の子供たち。眼球摘出をせざるを得ない彼らに心を痛めた小夜は、患児のメンタルケアを不定愁訴外来担当の田口に依頼し、小児愚痴外来が始まった。
手術前で精神的に不安定な子供たちのメンタルサポートを、不定愁訴外来担当の田口が行うことになった。時同じくして、小児科病棟の問題児・瑞人の父親が殺され、警察庁から出向中の加納警視正が病院内で捜査を開始する。緊急入院してきた伝説の歌姫と、厚生労働省の変人役人・白鳥圭輔も加わり、物語は事件解決に向け動き出す。読者を魅了する、海堂尊のメディカル・エンターテインメント
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前作が凄く良かっただけに、同じ登場人物でまた面白いものが書けるのかどうか、読む前から疑問でした。

少しSFの入った内容は、あまり好みではなかったですが、全体的には楽しめました。
加納・玉村の警察コンビや、その他の登場人物もそれぞれキャラが立っているのは、この作者の非常に面白いところだと思いました。

小児科医の奥寺教授、副島助教授、内山医師のやり取りが、今回メッセージを込めたかったところなのかもしれないと思いました。
小児科医(だけではないかもしれませんが。)の実情を訴えるという意味で。

「子供と医療を軽視する社会に、未来なんてないわ。」副島

「副島先生は、ご自分の生活に満足していらっしゃるんですか?」聖美
副島が心の奥底で圧殺し続けてきた何かが、密かに息を吹き返す。
緊急呼び出しのため着替えている自分の後姿を諦めたように見つめる夫の視線。自分の手をそっと握り、しがみついてくる幼い娘の手を振り解いて、冷たい夜の中に出かけていく自分の姿。

「内山君は間違っていない。医者だって人間だ。休みたいときもあるし、嘘をつく時だってある。だが今のままでは、君は将来禍根を残す。その禍根は、君自身の未来に傷痕を残す。悪いことは言わん。ここは老いぼれの顔を立てて、負けておきたまえ。」

「私が死ぬのは運命よ。だけどあなたの運命はまだあなたの手の中にある。あなたが私と同じ道を選ぶのはかってだけど、私はそんなことは望まない。だって、そのときこそ本当に私は死ぬの。私の存在を最後に消滅させるのは瑞人君、あなたなのよ。」

「全面協力知っている我々にそのような暴言を諮れるなら、当院にも考えがあります。」
「女が本気なら、そのときには男は見届けるしかない。それは力が要ることなんだ。」

時折見せる、強気な田口先生が良い。

「どうして俺は、どこでも田口先生なんか、といわれてしまうのだろう。」

ルールは破られるためにあり、それが赦されるのは、未来により良い状態を残せるという確信を、個人の責任で引き受けるときだ。

高階病院長

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