2012年6月16日土曜日

フリーエージェント社会の到来/ダニエル・ピンク


アメリカの労働人口の4人に1人が、本書で言う「フリーエージェント」という働き方を選んでいるという。フリーエージェントとは、「インターネットを使って、自宅でひとりで働き、組織の庇護を受けることなく自分の知恵だけを頼りに、独立していると同時に社会とつながっているビジネスを築き上げた」人々を指す。フリーエージェントたちが、そういった働き方を選んだ理由、そしてその生活と仕事の実態が詳細に描かれている。著者が1年かけて全米を旅し、大勢のフリーエージェントたちに直接会って調査しているため、机上で練られただけの社会論にはない説得力がある。
   本書の著者は、米上院議員の経済政策担当補佐官、労働長官の補佐官、副大統領の首席スピーチライターを務めたのち、フリーエージェントになった経験の持ち主。フリーエージェントの実態調査をといったミクロな視点と、フリーエージェントが社会に与えるインパクトといったマクロな視点からの議論がほどよくミックスされ、社会の大きな潮流をとらえた論述となっている。

 「いまの仕事が永続するなどと言える人はどこにもいない。誰もが『臨時』労働者なのだ」というとおり、現代の環境においては、企業に人生すべてを賭けることは難しい。しかし、日々問題にぶつかりながらも、自分らしい働き方を模索しているフリーエージェントたちの「証言」は、本書を生き生きと彩っている。また、成功しているフリーエージェントだけではなく、万年臨時社員として不当に搾取されている層についての論述も詳しい。

   日本では、社会のフリーエージェント化に関しては、アメリカに大きく遅れをとっている。しかし、正社員にならない働き方に対する関心は高まりを見せており、一部の業界では、すでにフリーエージェント社会になっている。本書の第5部で描かれているような未来の社会が実現するのも、そう遠い話ではないのかもしれない。(朝倉真弓)
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ナノスコープ:「拡大を目指さない」という方針を容赦ないまでに追究している超ミニ企業。

フリーエージェントの背景。
1.従来の労使間の社会契約:従業員が忠誠心と引き替えに会社から安定を保証してもらう、という関係が崩壊。
2.生産手段が小型で安価になって個人で所有できるようになった。
3.反映が社会の広い層に行き渡り、人々は仕事にやりがいを求めるようになった。
4.組織の寿命が短くなり、人々は勤め先の組織より長く生きるようになった。

仕事における責任の有無と仕事に対する満足度は緊密な関係がある。

「成功したと言えるのは、朝起きて、自分のやりたいことをやれる人だ。」

フリーエージェントは完全にオフの状態になることはほとんど無い。
24時間営業のコンビニエンスストアと同じように、客が居なくて店が空っぽの時も、店を閉めることはないのだ。





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