[楊志]
圧倒的な兵力に、宋江は追い詰められていく。
魯智深は、遼を放浪して女真族に捕縛される。鄧飛ひとりが救出へ向かうが、幾多の危難がそこに待ち受けていた。
そしてついに、青蓮寺は、楊志暗殺の機をつかむ。妻子と共に闇の軍に囲まれ、楊志は静かに吹毛剣を抜いた。
「父を見ておけ。その眼に、刻み付けておけ!」
楊志と、一瞬眼が合った、と石秀は思った。そして、楊志は微笑んだ。
なにか、別の世界を、李富は見ているようだった。戦場ではない。殺し合いでもない。これだけの人数がいるのに、見えているのはたった一人の生き様だけだった。あの男は、なぜあそこにいるのか。なにが、あの男を生かし、輝かせているのか。
5巻は、北方水滸伝で最高の巻の一つだと思う。
官軍の許定将軍の陣営から戦いとは無縁だった青蓮寺の李富が見た男の生き様。
このシーンは、小説全体の中で、一番と言っても過言ではない。
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