2011年7月24日日曜日

「知の衰退」からいかに脱出するか?/大前研一

金融危機で「集団IQ」の高い国のアドバンテージが消滅したいま、これまで「負け組」に甘んじていた国は大チャンスを迎えている! それなのに......漢字の読めない総理、ネットで答えが見つからないとあきらめる若者、金融リテラシーが低いことを気にもとめない大人、おバカキャラで視聴率を稼ぐテレビ----とにかく考えなくなった日本人。これで、危機は乗り切れるのか?
本書は現在の「政治」「経済」「社会」「ネット」「教育」「教養」に見られる「知の衰退」現象を取り上げ、私たちがそこから抜け出すためにはどうすればいいのか、そして、いま起こっている問題についてどう考え、どうやって解決策を見つけ出せばいいのかを、大前さんと一緒に考えていく構成になっています。
 本書を読み終えたとき、あなたは「考えること」の大切さに改めて気づき、「考えるため」のいくつかのヒントを手にしていることでしょう。

「ピンチこそチャンス」と危機を脱出するのは、気がついたあなたです。たとえ1人でも、行動を起こすしかありません。誰も率先して行動しようとはしない現代の日本社会において、その作業はあなただけのユニークなものになるはずです。
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現代社会では人間の脳が働く余地がない?
パソコン、ネットが普及し、情報にたどり着くだけで満足する人が増えてきた。
こういう時代だからこそ、もっと考える必要がある。

「低IQ社会」の出現
バカっぽい現象ばかりの日本。学力の低下、思考能力の低下、意欲の低下、

<自分自身は判断基準を持たないで、自分以外の大衆の選択に乗る。「一人勝ち」の経済学の裏側に見えてくるものは、みんなが求めているものを互いに確認しながら、その一点に集まっていくという、日本人の非常に危険な国民性である。>

バカっぽく見えているのは、考えていないから。

官製不況の根は「知の衰退」
日本人株1人負けは、外国人投資家の買いの現象。
世界を見た「投資マインド」で、ものの見方、考え方を変えていく。
現状をきちんと認識し、そこから目を背けないこと。
外資イコール悪という鎖国状態。
自分で考えると言うことを放棄し、安全を全て他人任せにしているということである。完全に「お上頼み」にしてしまし、政府は「規制は任せろ」とばかりに、消費者庁の設置まで突き進んでしまうのだ。
どうやって産業をのばすか、ではなく、どうやって産業を規制していくかという方向に向かっている。

1億総「経済音痴」
ゼロ金利でも銀行に預け続ける国民
目から鱗でもアクションを起こさない。
葬式代くらい自分で出したいー>生前に葬式の大枠を決めて入札をさせた上で、葬儀屋を決めておけばいい。そうすれば3分の1くらいにできる。

ネット社会と脳
「もっとネットを使いこなせ」
バーチャルではなくリアルの世界で育てたいと考えるのは結構だが、そんな風にして育った子供は、21世紀社会に適応できないだろう。
ネットの悪影響議論は、新しい技術ができると必ず起こる議論。
知識獲得に費やしていた時間を思考に当てればよい。
これからは経営もWIKIPEDIAの世界に。
ネットの世界では、「誰が言ったか」ではなく「何を言ったか」が重要。
サイバースペースから情報を均等に入手(RSSで500/day, 3500/wk)し、新聞やニュースは見ない。
雑誌は編集方針に偏りがあるものを購読し、総合的な幕の内弁当雑誌は足しにならない。
・毎週土曜日に3時間ほど時間を作り、自分が感心のあることについてネットサーフィン。
・その結果「要はこういうことなんだ」「それなら私はこう考える」をレポートにまとめる。

無欲な若者と学力低下
今時の若者論:「学力低下」「意欲低下」
学力低下を論ずるならば、その学力とは何か、どんな学力が今後の子供達に必要か?を問題にしなければならない。
偏差値教育が日本に与えた影響は、自分たちの能力基準を、偏差値に支配された世界で決められる。
本来は、自分の能力は自分で判断すべきであり、自分のやりたいことはその判断に基づいて自分で決めるもののはず。
偏差値教育は、言葉を換えれば、教育ではなく「訓練」である。自動車の運転、飛行機の操縦と同じ。
少年ジャンプ世代:「努力・友情・勝利」極めて身近な狭い世界でのハッピネス→非常に内向き
ゲーム・キッズ世代:RPGメンタリティ。

「集団IQ」を高める教育改革
教育とは、子供達に知的環境を与え、深く考える癖をつけさせることにほかならない。
自分で考えることが身についてさえいれば、結果的に知識はなくても、社会に出たら上手くやっていける。

「低IQ社会」で得をしているのは誰か?
カラオケ資本主義:私たちはほとんど、なんらかの技術の後ろ盾で歌い踊っているに過ぎない。
だが重要なのは、その一方で皆が乗りかかりたくなるようなカラオケ構造を創造する人間が居ることだ。
どうすれば、この低IQ社会の罠から抜け出せるのか?
個人としてとことん自衛するしかない。

勝ち組から学べ
どの国から何を学ぶか?
アメリカ:
移民政策、世界に開かれた国づくりをして、優秀な人材を集める。
世界最高レベルの高等教育機関。

小国:
グローバル化に対応した教育
「答えがない世界でどうやって生きるか?」「自分の母国以外で活躍するにはどういう能力が必要か?」こういう観点に立って、教育を再構築した。

中規模の国々:
ドイツと韓国。
高麗大学:多国籍企業のアジア本部長を作る。
梨花女子大国際学部:国際機関の長になること。
ドイツ人を変えたのは、アメリカにおけるM&A。購入したアメリカ企業がひっくり返りそうになったときに、困難に直面。
アメリカの工場の経営だけでなく、財務の立て直しくらいできなければダメ。ドイツ式経営だけではダメ、英語ができなければ話にならない。

EU:
財政規律。

中国:
「外資導入」「地方分権」改革開放は、地方から起こり、中国はこの地方分権によって発展した。

どの国からも必要なところだけを学ぶ。中国の問題点を挙げれば切りがない。
全ての国から、全ての人からも学ぶことがある。

21世紀の教養
現在のリーダー達に溶融された「ノーブレスオブリージュ」
「あなたは地球を商売の道具にする一方で、この地球に何を返していますか?」
グローバル経済の負の側面を意識しなければならない。
サイバー世界の最先端の動きを知っているか?
サイバー時代の現役人間なのか、新聞で満足している旧時代人間なのか、一発で分かってしまう。
考える人間のほうが知っている人間より遙かに優秀である。


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