小笠原の青い海でイルカのテティスと共に育った心優しい青年・拓海。
東京からやってきた美しい歌声を持つ音大生・流香。
ふたりはテティスに導かれ、きらめくドルフィンビーチで劇的な出逢いを果たす。
互いを思うあまり、悲しい運命に翻弄される二人の愛の行方は?
優しい涙とまばゆい愛が心の海に広がる純愛小説。
間宮の大人っぷりにはやられた。
「確かに、僕は君のことを何も知らない。名前だって、今日、初めて知った。けれど、僕には一つだけ分かっていることがある。いつの時代に君と巡り会っても、僕は出会った瞬間に告白しただろうって事を」
このワンちゃんを助けてあげて。
無理だよ。
どうして?
その子が願わなければ、そこから出ることはできないんだ。
「君は、昨日もそうだったが、素直な男だね。いや、率直というのとは、ちょっと違うな。なんだろう。とにかく、これを言ったら悪印象になるとか、そういう計算が全くないんだな。君のような人間は、私には眩しくてね」
「このまま何年ホストを続けたとしても、きっと君は変わらないでしょうね。きざなことを言っちゃえば、真夜中の太陽ってところかしら。周りがどれだけ深い闇に包まれても、その光が弱まることはない。みな、変わるのが難しいと言うけれど、変わらないことが一番難しいと私は思う。」
「きっと君は、深い悲しみの傷を誰かの大きな愛によって塞いでもらったのね。けれど、傷を負ったことは事実だから、消えはしない。だから、あなたは苦しんでいる人を見ると無意識のうちに共感し、優しくなれるのよ。」
お前はたくさんの愛を持っておる子じゃ。だが、愛し方と愛され方を知らん。そばで見守ることだけが、愛だとおもっとる。それは悪い事じゃないが、ときには、求めることも必要じゃ。
間宮「謝ることはないよ。落ち着いて声楽をやる気になったら、拓海君と二人でミラノにおいで。ミラノ音楽学院の教授の件は、いつでも大丈夫なようにしておくから。僕は今まで通り、君の力になるよ。これからは、友人としてね。」
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