2008年10月4日土曜日

ある愛の詩

新堂冬樹

小笠原の青い海でイルカのテティスと共に育った心優しい青年・拓海。
東京からやってきた美しい歌声を持つ音大生・流香。
ふたりはテティスに導かれ、きらめくドルフィンビーチで劇的な出逢いを果たす。
互いを思うあまり、悲しい運命に翻弄される二人の愛の行方は?
優しい涙とまばゆい愛が心の海に広がる純愛小説。

間宮の大人っぷりにはやられた。

「確かに、僕は君のことを何も知らない。名前だって、今日、初めて知った。けれど、僕には一つだけ分かっていることがある。いつの時代に君と巡り会っても、僕は出会った瞬間に告白しただろうって事を」

このワンちゃんを助けてあげて。
無理だよ。
どうして?
その子が願わなければ、そこから出ることはできないんだ。

「君は、昨日もそうだったが、素直な男だね。いや、率直というのとは、ちょっと違うな。なんだろう。とにかく、これを言ったら悪印象になるとか、そういう計算が全くないんだな。君のような人間は、私には眩しくてね」

「このまま何年ホストを続けたとしても、きっと君は変わらないでしょうね。きざなことを言っちゃえば、真夜中の太陽ってところかしら。周りがどれだけ深い闇に包まれても、その光が弱まることはない。みな、変わるのが難しいと言うけれど、変わらないことが一番難しいと私は思う。」

「きっと君は、深い悲しみの傷を誰かの大きな愛によって塞いでもらったのね。けれど、傷を負ったことは事実だから、消えはしない。だから、あなたは苦しんでいる人を見ると無意識のうちに共感し、優しくなれるのよ。」

お前はたくさんの愛を持っておる子じゃ。だが、愛し方と愛され方を知らん。そばで見守ることだけが、愛だとおもっとる。それは悪い事じゃないが、ときには、求めることも必要じゃ。

間宮「謝ることはないよ。落ち着いて声楽をやる気になったら、拓海君と二人でミラノにおいで。ミラノ音楽学院の教授の件は、いつでも大丈夫なようにしておくから。僕は今まで通り、君の力になるよ。これからは、友人としてね。」


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