2008年10月8日水曜日

血塗られた神話

新堂冬樹

悪魔と恐れられた街金融の若き経営者、野田秋人。
関係する人々が次々と惨殺されていく。常軌を逸した連続狂気殺人の目的とは?
「金」ほど人間の本性をむき出しにし、争いごとを生むモノはない。人の命などは毛ほどの重さも持たぬ街金融の世界で修羅を生きる筆者ならでは、超リアルな問題作。

新堂冬樹の第一作という事で、読んでみた。
確かに、新堂冬樹らしい残酷な描写や、ブラックリアルなストーリーだったが、解説でも述べられているとおり、その他の黒新堂作品への助走段階と言える。

クレイジー、プレイヤーなど、恐ろしく残忍な人間が居ると思えば、主人公、京子、大崎、荒木、など暖かい人間も描かれている。
筆者はどこかで、後者のような人間が居て欲しいと願っているのだろうか。

種明かしは、少し強引な気がした。

京子
「理由はあります。目の前で困っている人が居たら、ほっておけないという理由。私は幼い頃施設に入ってました。両親が交通事故で同時になくなって。でも、私はまだまだましな方でした。だって、他には親に捨てられたり、人を信じられなくなるような体験をした子供が一杯いるんです。」

大崎
「結局人間は、間違いを犯しながら善悪の区別をつけていくモノだと私は思います。最初から、完璧な人間など居ません。大事なのは間違いや失敗をしたときに素直に反省し、同じ過ちを繰り返さない事じゃないでしょうか?」

ミントジュレップ
ミントの葉
砂糖
ソーダ水
クラッシュアイス
ウィスキー

しばらくは心地良かったが行きも時間が経つにつれて本性を現した性悪女のように、私を不快にさせた。

京子
「暴力だけが、いけないと言ってるんじゃないわ。人間には理性があり、他を慈しむ心を与えられている。自分の利益のために、人を傷つけ陥れる。人を恨み、自分を責める。想像力という、地球上のどんな生き物よりも素晴らしい力を私たち人間は与えられているのに、動物以下の卑劣な行為をしている人が多いのがとても悲しいわ。すべてのモノに愛を注ぎ、そして許す。難しいことかもしれないけど、それが大切なことだと私は思う。」

主人公の「俺が殺されたら京子は相手を許せるか?」という言葉の答えを聞いてみたかった。


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