2011年1月12日水曜日

夜明けの街で/東野圭吾

渡部の働く会社に、派遣社員の仲西秋葉がやって来たのは、去年のお盆休み明けだった。僕の目には若く見えたが、彼女は31歳だった。その後、僕らの距離は急速に縮まり、ついに越えてはならない境界線を越えてしまう。しかし、秋葉の家庭は複雑な事情を抱えていた。両親は離婚し、母親は自殺。彼女の横浜の実家では、15年前、父の愛人が殺されるという事件まで起こっていた。殺人現場に倒れていた秋葉は真犯人の容疑をかけられながらも、沈黙を貫いてきた。犯罪者かもしれない女性と不倫の恋に堕ちた渡部の心境は揺れ動く。果たして秋葉は罪を犯したのか。まもなく、事件は時効を迎えようとしていた・・・。
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こんな話を生き生きと語ると、秋葉はこう尋ねてくる。
「今はそういうこと、しないんですか」

「いいことを教えてやる。赤い糸なんてのは、二人で紡いでいくものなんだ。別れずにどちらかの死を看取った場合のみ、それは完成する。赤い糸で結ばれてたってことになる。」

「あたしに夢を見させた。決して見てはいけないと自分に禁じてた夢だったのに。わかる?夢を見る前より、それが覚めたときのほうが心は寒くなるんだよ。」

「あなたの家庭のこと。それはあなたが何とかして。あたしはあなたを自分のものだと思うことにしたから。」


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