2012年12月9日日曜日

外資系金融の終わり/藤沢数希


『世紀の空売り』も『ウォールストリート投資銀行残酷日記―サルになれなかった僕たち』も超える、
金融業界をテーマとした快作が日本人の手によって誕生!
身も蓋もなく、苦笑せずにはいられない人気ブロガーの筆致が冴えわたる。

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僕は海外の大学院で数理科学の分野で博士号を取得し、その後、東京で外資系投資銀行のひとつに勤めはじめた。
何度か転職しながら、いくつかの外資系投資銀行でクオンツやトレーダーなどの仕事をしてきた。
そして、会社に勤務しながら、会社には秘密で、ブログ「金融日記」をかれこれ8年以上も書き続けてきた。
ファイナンス、経済学、そしてエネルギー政策に関する本もそれぞれ出版した。
外資系投資銀行に勤めながらも、ジャーナリスト的な視点や経済学的な視点で、この激動の金融業界を内部から眺めることができる、
という世界のなかでも大変稀有なポジションに、いつの間にか僕は立っていた。

じつは、いま、世界の資本主義経済が大きな岐路に立たされている。
それはリーマン・ショック以降に左翼のおかしな連中が言い出した「強欲な市場原理主義が世界を滅ぼす」というような話とは違う。
いや、まったく反対なのだ。
このグローバル資本主義経済に欠かすことができない金融システムを担う世界の金融機関が、市場原理が働かない組織に成り果てようとしているのだ。
本書では、世界同時金融危機、リーマン・ショック、ギリシャ・ショック、そしてユーロ危機に至る最近のマクロ経済の重要なトピックの解説を縦糸に、
そして、こうした経済環境のなかで激変する金融業界の赤裸々な内幕を横糸にして、これからの世界経済、そして日本経済の未来を考えていく。

また、良くも悪くも、日本社会に入り込んだ外資系企業というものの生々しい実態をお見せしようと思う。
外資系金融機関や、外資系コンサルティング会社などに多くの日本の学生が就職し、
日本の伝統的大企業や日本の官公庁もこうした外資系企業とさかんにビジネスをしている。
外資系企業の実力、人事制度、報酬やリストラ、そこで働く人々の人となりやキャリアなど、僕の知っていることを包み隠さず書いた。
実際のところ、有名な外資系企業も、欧米のちょっといい学校を卒業しただけのふつうの外国人のサラリーマンが働いているのであり、
日本のオフィスでは多くのふつうの日本人が朝から晩まで働いているのである。
欧米の有名なファームだからといって何か特別な権威を感じる必要はまったくない。
それどころか、本書でくわしく論じるように、外資系企業の実際の業績は、日本のダメな大企業と同様にダメダメであり、
世界に多大なコストを押し付けて、世界中からひんしゅくを買っているトホホな会社なのだ。
だから気後れする必要はまったくないし、逆に日本から排除する必要ももちろんない。

それでは、世界経済を牛耳っていた外資系金融の終わりのはじまりを、本書でいっしょに見ていこう。
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「最初の会社にお世話になったし、上司や同僚にも悪い。それにそんな形で会社を裏切るなんて事はできない。」
ヘッドハンターの言葉が僕の転職を決意させた。
「いい加減にしろ。君の会社が今までに君に払ってきた金が、紛れもない会社の君に対する評価なんだ。君はプロフェッショナルなんだぞ。これからだって君を評価してもっと支払ってくれるかなんて分からないよ。Too Little, Too Lateなんだよ!」
安すぎで、これから払ってくれると言っても遅すぎ。

アメリカでは、貧乏人の住宅ローンを寄せ集めたMBSのくずをさらに束ねたCDOが急にアメリカ国際並みのトリプルAの信用を得るという奇跡が起こっていた。日本では、並み程度の容姿の若い女を大量に寄せ集めて結成されたアイドルグループAKB48が大ブレークした。そしてヨーロッパでは、二級国家を寄せ集めて通過をユーロに換えると、二級国家の金利も低下するというマジックが起こっていたのだ。





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