2011年5月22日日曜日

永遠の0/百田尚樹

「生きて妻のもとへ帰る」
日本軍敗色濃厚ななか、生への執着を臆面もなく口にし、仲間から「卑怯者」とさげすまれたゼロ戦パイロットがいた……。
人生の目標を失いかけていた青年・佐伯健太郎とフリーライターの姉・慶子は、太平洋戦争で戦死した祖父・宮部久蔵のことを調べ始める。祖父の話は特攻で死んだこと以外何も残されていなかった。
元戦友たちの証言から浮かび上がってきた宮部久蔵の姿は健太郎たちの予想もしないものだった。凄腕を持ちながら、同時に異常なまでに死を恐れ、生に執着する戦闘機乗りーーそれが祖父だった。
「生きて帰る」という妻との約束にこだわり続けた男は、なぜ特攻に志願したのか? 健太郎と慶子はついに六十年の長きにわたって封印されていた驚愕の事実にたどりつく。はるかなる時を超えて結実した過酷にして清冽なる愛の物語!
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「私には妻がいます。妻のために死にたくないのです。自分にとって、命は何よりも大事です。」
盗人に何故盗んだのか、と問うて、欲しかったから、と答えられたような気持ち。

当時と今の価値観の違いを象徴していると思った。

個人的には、自分だけを喜ばせる信念なんてない方がよいと思っているけど、これは国かなかなか自分だったらどうするか、考えるのが難しい。
でも、主人公のように現状と信念の狭間であがき続けたいとは思う。

「8時間も飛べる飛行機は素晴らしいものだと思う。しかし、そこにはそれを操る搭乗員のことが考えられていない。8時間の間、搭乗員はひとときも油断はできない。8時間も飛べる飛行機を作った人は、この飛行機に人間が乗ることを想定していたんだろうか。」

あとは、幹部クラスが日本の弱みという、現状にも通ずるようなことが出てきたのも印象的。
現場と本質を捉えず、上層部と保身に気を遣う。

「あなたがこれほどまでに私たちに尽くしてくださるのは、宮部の恩義だけですか?」

「最後に宮部と会ったとき、必ず生きて帰ってくる。たとえ腕が無くなっても、足が無くなっても、戻ってくるーと。例え死んでも、それでも、僕は戻ってくる。生まれ変わってでも、必ず君の元に戻ってくる、と」

「私があなたを見たとき、私は宮部が生まれ変わって帰ってきたのだと思いました。あなたが宮部の外套を着て、家の前に立っているのを見たとき、宮部は約束を守ったのだ。と思いました。」


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